妊活の知恵倉庫
(この記事は約7分で読める文字量ですが、普段聞きなれない言葉が多く、少し難しい内容となっております)
前回までは
これらで脈診についてのほとんどをまとめましたが、より臨床的に妊活にどう使用しているのかを過去の臨床例を含めて紹介します。
虚の脈象
脈象としては①、②でまとめたように29種ほどありますが、妊活で実際に、見られる脈象としてはその半分ほどで”弦”、”沈”、”遅”、”数”、”微”、”細”、”短”、”弱”、”濡”、”虚”、”実”、”滑”、”渋”、”緩”、”芤”があります。
その中では”遅”・”微”・”細”・”短”・”弱”・”虚”・”濡”などは触れる力が乏しいという共通点があり、血不足や血を送り出す脈気が弱い状態、つまり十分な血が生殖器へ送られていない為に生殖機能が落ちてしまう→『妊娠力低下』を示す脈象です。
もちろんそれぞれの原因やそれに伴う処方もバラバラですが、根本としては虚証が主であり、その大きな原因としては”生まれつきの腎虚・脾虚”、”運動不足”、”不摂生な食生活”、”休息不足”が主です。
生まれつきの脾虚の場合は普段から食欲が湧かず食事は義務的に食べている、太りたくても太れないなどの症状が多く、また生まれつきの腎虚の場合は初経が遅かったり(15歳を超えた初経)、初経から月経周期が35日以上などの月経不順が見られるなどがあります。
そして生まれつきの脾虚や腎虚が見られる場合、他の人と比べると体力もかなり劣っていて疲れやすいなどを感じやすいことが多いですが、仮に体力の度合いなどの自覚症状を伴わずとも、先ほどの虚の脈象が右関(脾の状態を見る位置)や左右の尺(腎の状態を見る位置)で見られるとそれぞれを立て直す補虚の薬をそれぞれ使用していきます。
またそれに伴い、それらの部位の脈が力強く変化していくことで、生殖器も活動的になり、つまり妊娠力UPに繋がります。
この場合、理想は脈の強さは健常人レベルまで強くなることですが、実際にはその人の中では明らかに強くはなっても、元々脈が弱い傾向にある方が他の人との平均の脈の強さほどになることは少ないです。
あくまで「他の人と比べても強くなる」というものではなく、その方自身の力を最大限にまで発揮できた時の脈の強さが変化に現れるでしょう。
また、生まれつき以外で食事・睡眠(休憩)・運動・仕事・ストレスのバランスの中で虚(疲れ)を溜め込んでしまっている場合、もちろんそれぞれの生活習慣を見直すことも大事ですが、それが自分でコントロールできるなら自分でしているはずです。
分かってはいてもなかなか自分でコントロールできない虚(疲労・臓の弱まり)に、その方に合った漢方薬でその虚をフォローしていきます。
例えば細い脈象の場合は、脈内を満たす血の容量が少ないので細くなっているため血を補う漢方を使用し、
力が弱い脈象の場合は血を送り込む心臓の圧や循環に関わる筋肉の押し出しも弱いので運動不足を助けたり血の循環を促す補気をしていき、
沈んでいる脈象に対しては血が重力に勝てるほどの上昇性の力が足りない為、上昇の性質を持った昇堤剤を使用していき、
遅い脈象は冷えなどからきているならば温めて心臓や血流を活性化していくと良いなどの違いがあります。
またそれらは臨床においては単独で出るようなシンプルな脈の方はほとんどなく、ほとんどが組み合わせの中で同時に出ることが多いです。
脈診を主にすることで初めて妊娠できたCさん
脈証としては初婚が36歳で避妊することなく妊娠せず1年半、また不妊治療に通い2年3ヶ月で妊娠陽性反応も一度も出なかったCさん。
相談時には40歳を迎える頃で、年齢的にも何としても妊娠したいと切望し、来局されました。
初経は13歳で40歳に至るまで生理不順は全くなく、生理痛も感じず生理の血の状態も聞ける範囲では問題なし。
普段の疲労感も自覚症状はなく、やや末端冷え症や生理時の腰のダルさなどが出る程度。
他にも貧血や胃腸の不調症状なども一切なく、ホルモン値や内診でも問題なし。
不妊治療では6回の体外受精をするも、全て着床できず。
舌診では苔は薄白で問題なし、舌の形も綺麗、舌裏の静脈怒張も強くなかったものの、舌色がやや淡白傾向で赤味が少し弱い程度。
これらの情報でそれほどの問題は出ていませんでしたが、脈診では関~尺位で沈遅細弱の脈象が出ており、明らかな虚の脈象。
脾胃の不調の症状は出ていないものの、右関が沈遅細弱で脾気虚&気の昇堤不足、また左右共に尺が沈ではないものの、遅細弱脈により腎虚(陽虚>陰虚)&血虚。
これらにより補脾気&気の昇堤に補中益気湯、そして血虚に婦人宝、また腎陽虚に鹿海馬の組み合わせをベースに処方。
あくまでベースなので、相談によって多少変更や増減をしましたが、これらの組み合わせをベースとして7ヶ月ほどで40歳で初めての妊娠陽性を得られました!(漢方を飲み始めてからの体外受精2回目、総体外受精で見ると8回目)。
また、40歳以上では流産率も50%以上と言われる中、妊娠初期を超えられそうでこちらも安心しているところです。
十人十色
あくまで大きく捉える上で脈は沈脈や遅脈のようにくくっていますが、その強さ・速さ・質などは十人十色で全ての脈に個性があると感じます。
こういった例を見ると、「私も同じだ!」と思って真似をして飲む方もいるようですが、絶対に同じではありません。
ブログを見て、「この妊活法で妊娠しました」というものなども、その方はそうであってもあなたはあなたなので、あまり参考にならないでしょう。
他の方の「妊娠した」という結果ばかりが眩しすぎて、一つでも共通点を見つけると(例えば”40歳”という共通点)真似したくなると思いますが、本質は1人1人がもつ体質を解決するということですので、一つの共通点だけではそれを解決できません。
また、個性というと脈だけでなく、似ている顔はあっても同じ顔の人は居ないように、舌診にも個性がありますし、生理周期日数、血の量・色・質、生理痛の出方、生理周辺症状なども全く同じ人は居ません。
また、妊活において苦しさを感じるというと一括りになっているように感じますが、仕事とのバランスや夫やその他の家族や友人との関係など、また妊活者自身の妊活に対しての感情も人それぞれです。
私との相談も一言一句、同じ相談をする人は絶対にいません。
今までの妊活で上手くいかないと感じている方は、誰が来ても同じお薬を飲むような型に当てはめたマニュアルに沿うだけでは上手くいかないのかもしれません。
欠けたパズルの型がカチッとはまらないと妊娠に至らない人もいるということです。
その場合は、やはり自分だけのパズルの形を見つけ出さないといけません。
そういった妊活者との相談を通して感じるのは、私と相談するまでに妊活に対して抱えている心の疲れの原因は、心の通わない妊活に対しての不満です。
最先端の技術を駆使した不妊治療でも、その方の心の訴えを無視して数値ばかりを見たり、過去の例ばかりを参考にして目の前の人間に合わせないことがあなたの妊活を孤独なものにしていると考えています。
私の子宝漢方相談は相談内容もあなたの為だけ、カウンセリング内容もあなたの為だけ、漢方薬もあなただけの身体に合ったものと自信を持って言えます。
巷の多くの漢方薬局も、相談しているように見えて、マニュアルに沿っているだけのところも多く感じますが、妊活はあなたの心と身体にフィットしたものがベスト、そんなものだと思います。