妊活の知恵倉庫
前回までは”切診”の”脈診”についてまとめました。
他にも切診には、日本漢方を代表する診察方法に”腹診”があります。
これは時に舌診・脈診・問診で読み取れない病状を示していることもありますが、鍼灸師や医師の資格のない薬剤師が行ってはいけないものであるため私は基本的には行っていません。
やったことは多少ありますが、同意した身内の方のみに参考にしたことがある程度ですが、例えば鍼灸師の方と腹診情報を共有することで処方を調節することもありますので、自分の感覚にゆだねた分析ではありませんので細かいまとめではなく、妊活において見られやすい代表的な例だけをまとめていきます。
腹診
まず仰向けになり、全身の力を抜き手足を自然にまっすぐにした姿勢を取ってもらいます。
服などは、上着などの厚手のものは腹にかからないようにしますが、セーター程度の厚さのものは着たままで構いません。
人差し指・中指・薬指の3つの指先で按じることで腹力などを読み取っていきます。
主に、按じた時の腹の力加減・張り・動悸・水音を中心に観察します。
時に、お腹からの寒熱情報や、按じない状態でのお腹の形、皮膚の色合いなどを参考にすることもあります。
↑の腹図の中で、妊活において何より重要な部位は”小腹(または”臍下”)”です。
小腹部を按じた際に芯が無く力弱い状態は”不仁”と言い、腎の力が弱まっている状態を示します。
「腎の弱まり=生殖機能の低下」であり、この状態は卵子の質が低下しやすい状態を表します。
つまり腎虚であり、他の情報などを加味して腎陰虚、腎陽虚、腎精虚のいずれかを分析し、補うと良いでしょう。
この部位は力が弱く、按じても痛みがほとんどないと妊娠力が落ちている状態ですが、逆にここを按じた時に固く、また過敏に痛みを感じる場合もありますが、これは腎虚の逆の腎が元気な状態を指すわけではありません。
臍周囲~小腹~少腹にかけて按じた時に圧痛を強く感じる場合は、これは腹腔内やその周辺に瘀血の存在があるということであり、また圧痛以外にも臍上は凹んでいても臍下が張って見た目も凸状に飛び出ている場合も瘀血を意識していきます。
妊娠する為には「子宮内膜を整えること」・「卵の質を高めること」この2点が重要であり、腹診では小腹部の軟弱→『腎虚=卵巣機能の低下』を表し、臍~小腹部の圧痛→『子宮周辺の瘀血=子宮内膜の乱れ』となる為、この部位の反応は妊活においていかに重要かわかるでしょう。
しかし、「腎虚→補腎薬」や「瘀血→駆瘀血剤」というストレートな処方で簡単に妊娠力が上がるかといえばそうでもなく、例えば他の腹診でいうと胸脇部(あばら骨ライン)は横隔膜にあたりますが、横隔膜の緊張は”胸脇苦満”という状態となり気の停滞はもちろん、ひどいと血や水の停滞に関わります。
先ほどの臍周囲の瘀血は駆瘀血剤のみで動かない場合に、胸脇苦満も伴う場合、疎肝理気も合わせてしなければいけません。
他にもお腹を揺らしチャポチャポと水音が鳴る場合や、お腹を叩いたときのポンポンという高い音が出る場合は、胃腸内に水が停滞している状態であるため、それが腎機能を落としていることもあり、水毒を解毒しないといくら補腎しても生殖機能が上がらないこともあります。
妊活においては臍~小腹部の状態を整えれば良いのですが、その頂点を良いものに維持するために他の腹の情報も含めて根作りする必要があるということです。
触らない腹診
薬剤師の資格のみでは、基本的に身体のどの部位も触ってはいけません。
脈のみはバイタルサインチェックとしてOKなのです。
じゃあ腹診を勉強する意味がないかと言うとそうでもありません。
実は”触らない腹診”を行うことができます。
それは”問診”により導き出す方法です。
例えば、胸脇苦満は横隔膜の柔軟性が固くなっているため、「腕を上に伸ばし、そのまま背中を後ろに反らせる体勢をとってください」と伝え、その時にあばら骨あたりの張りを感じるかどうかを伺ったり、胃内停水であれば、横になった場合にお腹からチャポチャポとした音が聞こえるかを妊活者に試してもらうこともあります。
また、自分で仰向けになって下っ腹をグーッと押してみてもらった時に、痛みを感じるか軟らかいかなども聞くこともあります。
また、グッとお腹に力を入れて、臍下5cmの辺りを触ってもらった時に固くなるか軟らかいままか聞いたり、脱力して鏡で横から見た時に下腹だけポコッと出ていないか見たり聞いたりします。
他の細かい腹診も重要でしょうが、妊活においてはこれらが分かるだけでも大きい時もあります。
(問診・舌診・脈診で十分な情報が得られている場合は、それらを確認しないこともあります。)
このように、私は触らずにできる範囲内で腹診を妊活に活かしております。
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