妊活の知恵倉庫
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生理前・中・後の体調変化から体質を知り、妊娠力を上げようシリーズ。
今回の症状は、相談していると案外多くの方に見られる『生理前・中・後の発熱・微熱感』です。
明らかな発熱や自分の感覚では微熱なども感じていなくても、生理前の基礎体温が37度を超える場合もこれに当たります。
この症状の原因は
①血熱内盛
②瘀血内阻
③気血虚弱
④肝腎陰虚
これらの”内傷”の4つと
⑤気血虚弱による外感
⑥外感伏気
の2つの”外感”によるものとに分かれます。
”内傷”は体内での異常が引き起こす症状のことを意味し、”外感”は風邪・インフルエンザ・コロナウイルスなどのように感染症由来を意味します。
内傷と外感の弁別
外感は感染症なので、生理毎に繰り返し感染すると思っていない人もいますが、やはり繰り返し風邪をひいてしまう人もいます。
内傷と外感の弁別は厳密にいうとかなり複雑ですが、基本的には喉痛・鼻水・咳・痰・寒気・倦怠感・関節痛などのような”かぜ症候群”が見られるかどうかがポイントでしょう。(頭痛は外感でも内傷でも出るので省いています。)
また、微熱感はあっても実際の体温に変わりのない”感覚”のみである場合は”内傷”です。
他にも手足のみの熱籠りや、睡眠中~起床時の熱感などはかぜ症候群ではなく”内傷”によるものと考えましょう。
相談にのっている中では外感による発熱はあまり多くは見られません。
風邪を繰り返し引いていると思っていても、実はそれは身体の内側からの症状であることも多いです。
内傷による生理前中後の微熱の弁別
まず①血熱内盛&②瘀血内阻と③気血虚弱&④肝腎陰虚で大きく違うのが”虚”と”実”です。
”虚”と”実”の違いを弁別に活かすと、”虚”になりやすいのは生理前よりも出血・脱気中の生理中~生理後が主です。
ですので、生理中~生理後で発熱が見られやすい人は③・④であり、逆に生理前に微熱感・発熱症状が起こり、生理が始まった途端微熱感が無くなる人は①・②でしょう。
より細かい弁別
まず①血熱内盛と②瘀血内阻の見分け方は、どちらも生理前に見られる症状ですが、①は生理に関わらず体内に熱邪を抱えているタイプであり、②は基本的には熱は抱えていないものの血の滞り(瘀血)が存在します。
『生理前の発熱・微熱感』だけに目を向けると違いが分かりにくいですが、舌診では明らかな差異が見られます。
舌の色の赤味が強いと熱の勢いが強いことで①、舌の色が紫だと血の滞り(瘀血)があるということで②とわかるでしょう。
他にも月経症状などからも多くの情報を得られ、熱が溜まりやすい①の体質の場合は生理周期が短く(25日以下)、瘀血がある場合は生理周期は短くも長くもなり不安定です。
また、経血の色は①の場合は暗色が見られても赤色がベースです。もしくは鮮血色が強いです。
出血の勢いが強めで、1・2日目のピークが多く、3日目以降にガクッと下がることが多いです。
②の場合は血の塊が大きく多めで、色合いも明るさはほとんどなく暗い色をしています。
血の勢いにはムラがあり、スッキリと出にくい傾向にあります。
他にも細かくありますが、これらで大体の弁別はできるでしょう。
①・②の原因と漢方薬
①は元々身体に熱が溜まりやすいタイプですが、生理前になると気・血が胞宮(子宮)に集まり身体全体の巡りが滞りやすくなるので、元々の熱も滞ることで熱症状が強く出てしまいます。
②は元々は熱は無いものの、やはり生理前に気・血が胞宮に集まり全身の気・血が滞りやすくなりますが、瘀血があるとその滞り度合いが強く、身体を巡る相火(体温などの熱エネルギー)も滞り、発熱・微熱感となるのです。
つまりそれぞれ元々身体に溜まっている熱や瘀血をお掃除できると、生理前になっても負担は感じなくなり、また熱も瘀血も赤ちゃんを育む上での大きな障害となるので、これらを取り除くことは妊娠力向上にも繋がります。
①の血熱内盛に対しては牡丹皮・玄参・生地黄・赤芍薬などをベースとした”清熱涼血調経”を行う清経散加益母草(清熱滋陰)か四物湯去川芎加牡丹皮・山梔子・黄ゴン(清熱補血)で処置していきます。
エキス剤では清営顆粒・三物黄芩湯・三黄瀉心湯・加味逍遙散・温清飲・女神散などを使用していきます。
②の瘀血内阻の改善は、何より子宮内に瘀血があることが生理前の発熱を主として生理周期を乱し、強い生理痛を生み、妊娠力を下げている原因です。
牡丹皮・桃仁・赤芍薬・紅花・川芎・三稜・ガジュツ・丹参・水蛭・シャチュウetcの駆瘀血薬を中心とした桃紅四物湯や桃紅四物湯加減の血府逐瘀湯などをベースに、瘀血の状態に合わせ処方します。
エキス剤では血府逐瘀丸、四物湯、桂枝茯苓丸、折衝飲、芎帰調血湯第一加減、環元清血飲、野牡丹などを使用していきます。
それぞれ妊娠を妨げていた”熱邪”・”瘀血”が解毒されることで、妊娠力は高まるでしょう。
もちろん、”生理前の発熱を抑えること”に意味があるわけでなく、そこから原因と対策を練ることが重要です。
解熱鎮痛剤を使用して熱を抑えても妊娠力は全く上がりませんので注意しましょう。
”虚”と”外感”が原因の生理中・後の発熱・微熱感については次回に続きます。
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