
妊活の知恵倉庫
2020-07-06 19:34:00
生理前や生理中にフワフワ浮いたようなめまいや、ふらつき、目の回るめまい、また目の前が真っ暗になるなどのめまい症状を起こす方は多いでしょう。
めまいの漢方と言えば”苓桂朮甘湯”などが有名ですが、それで収まる例はかなり少ないです。
そもそもめまいは脳や三半規管(漢方では総じて”髄海”という)へ
気・血・津液・精のいずれかが巡らないことで平衡感覚や目の見え方に影響し起こります。
一般には生理前では気鬱~気逆によるめまい、
また生理中では出血に伴う脱気・虚血症状、陰虚陽亢、水毒(湿痰)などが原因となります。
それぞれの原因と、またそれを起こす身体の状態は不妊とどういった繋がりがあるのか、
また、それを是正することでどのように妊娠力UPへ繋がるのかをまとめていきます。
生理前に起こりやすいめまい
生理前には気・血が停滞しやすくなります(その詳細はこちら↓)。
生理前の気滞により起こるめまいは、日常的にはアレコレ頭で考え過ぎた時に目や頭がクラクラする時と同じ状態が起こっています。
つまり気滞を起こすことで交感神経優位が過剰になることで脳がオーバーヒートしてめまいを起こします。
この脳への過度な気滞を起こしている状態では、脳下垂体や視床下部のホルモン分泌や感受性に影響し、
FSHやLHの分泌異常を起こして妊娠力低下を招いてしまいます。
基本は気の過度な気滞に原因があるため、疎肝理気剤を使用していくと良いです。
時に気滞が過剰で化火を起こす場合もあり、瀉火も合わせて行わなければならないこともあります。
火を抑える漢方なら何でも良いわけでもなく
肝火(単発的なイライラ)や心火(長引くイライラや不眠)などの状態によって生薬も使い分けます。
また、水毒体質で身体に湿痰邪などもあれば、気滞→気逆や化火を起こして湿痰が頭部へ上昇することもあります。
頭部へ上った湿痰邪は、三半規管のリンパ液を汚しめまいの原因となるのです。
湿邪や痰邪などの水毒が絡む場合は、気滞の一時的なめまいと違い長引きやすいめまいであることが多く、
生理前以外でも雨の日にめまいを起こしやすいなども見られます。
卵胞・卵子を育てる卵巣が主にリンパ系に属する為、水毒の存在がある場合は卵子の成長に影響してしまいます。
妊娠力を高めるためには湿邪、痰邪、濁邪などの水毒の性質に合わせて卵巣周辺のお掃除をしていかなければなりません。
生理中に起こりやすいめまい
生理中は出血していることからもわかるように、血虚になりやすく、また出血に伴って気も失われ、気虚にもなりやすくなります。
単純に、脳に巡る血が不足する血虚性のめまいはもちろん、
血は十分にあっても気虚により血を上に持ち上げる力が不足し、立ち上がった瞬間にクラッとくる立ち眩み(起立性貧血)なども起こります。
これらの気虚・血虚は単純に生殖器の気虚・血虚に繋がり、赤ちゃんを育養する気血が不足している為に妊娠力が低下しています。
気は卵子の成長を、また血は子宮内膜に繋がるので、しっかりと気・血を補っていくと、妊娠力は自ずとUPするでしょう。
また、それらは単純な病理ですが、複雑な例では気虚により体内の水分調整機能が失われ湿痰邪を生み、
頭部(髄海)に湿痰邪がはびこることでめまいが起こりやすくなります。
髄海は脳全体や内耳である三半規管や蝸牛も含まれ、三半規管に影響するとめまいに、蝸牛に影響すると耳鳴り・難聴になります。
この時に効果があるものが冒頭にも挙げた”苓桂朮甘湯”です。
水毒による妊娠力低下は先にも書きましたが、頭部(髄海)に水毒が行くなら卵巣周辺にも同じように水毒が影響する可能性は高く、
この場合は利水・化痰も大事ですが、しっかりと補気して気の力で水分代謝機能を正常化することが重要となります。
また、血は陰血とも言われ、生理による出血は陰血を消耗します。
すると、陰虚陽亢という陽(交感神経)過剰を抑える陰(副交感神経)のバランスを崩しめまいを生じます。
この場合は、のぼせやホットフラッシュのような急激な暑さや発汗、手足の火照り、口やのどの渇き、不眠などを伴います。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)という、脚がいてもたってもいられない症状を起こす人も多いです。
陰を補うことが基本ですが、陽亢という一時的な興奮を緩和する為に潜陽薬を使用するなどで対応していきます。
陰虚はすぐに補えるものではないので、陰虚陽亢によるめまいは他のめまいに比べ程度が強く、治りにくい傾向があります。
陰虚では舌の表面の苔が剥離していたり、もしくは苔が全くなく鏡面舌と言われる鏡の様にテカテカした状態の舌などが多く見られます。
この状態は睡眠もままならないことも多く、睡眠中のホルモンも安定しにくいこと、
また、陰は卵子を作る源となるもので、また陰血の虚は子宮内膜の素材である血の不足にも繋がります。
めまい症状だけでなく、妊娠力低下に関しても強い原因となりますので、しっかりと補陰して身体作りしていかなければいけません。
ですが、陰虚は老化症状の一つでもあるので、妊娠できる時間に余裕があるわけでもありません。
残った時間を大切にしながら、たとえ少ない可能性でも一つ一つの可能性を高めていく必要があります。
ホルモン剤は一時的な命の火を強めることはできますが、
身体の陰という残りのロウソクの芯を急激に消耗し、陰虚を招く諸刃の剣です。
長く不妊治療している人や35歳を超えて妊活している人は陰虚になっている場合が多いので、
これからの身体を労わるためにも、卵子を守りながら妊娠率を上げるためにもしっかりと陰を補っていきましょう。
スッポン料理で元気になったり肌が綺麗になるのはこの陰を補えたことでの元気さです。
それも良いのですが、毎日すっぽん料理を食べるなどは難しいので、漢方で日々の身体作りをしていくと良いでしょう。
しかし、気虚の方に陰を補う漢方を入れても胃がもたれ逆効果になるように、
”妊娠できない”というだけで身体作りの薬やサプリメントを決めず、
しっかりと身体に合った漢方薬で妊娠力を高めていくことが重要です。