
妊活の知恵倉庫
2020-07-22 19:00:00
前回↓
では生理前の胸の張り症状とその原因、またそれが不妊とどう繋がるのかについてまとめました。
また、生理前の胸に見られる症状の中でも、乳房の張りは気にならないが乳頭の痒み・痛みが顕著に見られることがあります。
乳房の張りは肝・胃・腎・衝脈・任脈が関わり複雑な場合もありますが、
生理前の乳頭のみの症状は”肝の異常”とシンプルに捉えられますので、
胸の張り、乳頭の痒み・痛みの中でもわかりやすい『乳頭の痒み・痛み』を緩和しながら妊娠力を高める漢方薬についてまとめていきます。
乳頭の症状のみ見られる場合の漢方薬
乳頭症状は東洋医学的には”肝の異常”と考えますが、
”肝の異常”には肝気虚、肝陰虚、肝血虚、肝気鬱、血瘀、肝陽上亢、肝風、肝火など多数あります。
その中でも生理前に乳頭に症状が見られる場合、ほとんどが肝気鬱がベースでそれに他がどう絡むかという状態です。
ですので、漢方薬としては
肝鬱の裏に血滞が見られるなら逍遙散
血滞でなく血虚が見られる場合は四物湯や婦人宝を加味
更に肝鬱が化火しているなら加味逍遙散
内風を起こしている状態では抑肝散(加陳皮半夏も可)
血虚は見られないが、気鬱が強い場合は柴胡・芍薬・枳実剤の四逆散、柴胡疎肝湯
気鬱は軽度だけれど少陽経(三焦・胆)に湿痰の滞りが見られる場合は小柴胡湯
気鬱も強く湿痰邪も存在し、化熱している場合は大柴胡湯
それぞれの状態に血瘀が見られる場合は駆瘀血剤を加味したり、駆瘀血に疎肝も兼ねている血府逐瘀丸を使用してきます。
また、肝陰虚による肝陽上亢の場合は腎陰虚が絡み乳頭のみでなく乳房の張りが主となることが多いですので次回まとめます。
柴胡の入っていない疎肝理気薬などもありますが、
私の臨床経験の中では生理前に乳頭への負担を感じる場合で多いのはほとんどが柴胡剤であり、
逍遙散や柴胡疎肝湯と補血剤を組み合わせることが多いと感じています。
肝の異常を見過ごすと・・・
この生理前に乳頭が痒い~痛いという状態は、その症状自体は我慢できないほどの苦痛であることは少ないです。
ですが、上に書いているように肝の異常により起こっている身体からのSOSサインであり、
特に痒みはまだ肝の異常が弱いですが、下着や服に当たるだけでも痛みを感じるのであれば肝の異常は強いです。
肝の状況で例えると痒み症状は肝気鬱程度ですが、
痛みは肝気結や肝血瘀、また肝火上炎などに波及しているでしょう。
”肝”は自律神経やホルモンバランスを整える働きがあるため、
”肝の異常”は精神的な波を生み、妊活をする上での心の負担になってしまい、
またホルモンの乱れは直接妊娠力低下に影響してしまいます。
その状態が当たり前になっているほど、その体質を改善し妊娠力を向上することに費やす労力は膨大なものとなってしまうので、
生理前に乳頭の痒み・痛みが見られる方はこれを良い機会としましょう。
漢方で内面から整えていくことは先を見据えた身体作りとしてとても有効ですが、
他にも肝気鬱の原因としては普段の呼吸の浅さや筋膜の柔軟性不足、そして普段の姿勢にも起因しています。
深呼吸と日々のストレッチ、また猫背改善を心がけることも重要なので、
漢方での体質改善と共に、生活面でもプラスを積み重ねて赤ちゃんに歩み寄りましょう