
妊活の知恵倉庫
2020-10-12 19:30:00
(この記事は約5分で読めます。難解度★★★★)
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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と妊活
現代医学ではクロミッドを代表する排卵促進剤の使用で排卵することが基本となるでしょう。
PCOSでは排卵できないことが次の排卵の負担になることもあるので、
自然排卵よりも排卵率を高めることは良いことだと思います。
ですが、連続するほどに卵巣は負荷がかかってしまい、育つ卵子の質は落ちる傾向にあります。
またクロミッドの副作用で代表的な”子宮内膜が薄くなる”という状態を引き起こします。
①卵子の質を高めること
②排卵して精子と出逢う(受精する)こと
③環境の整った子宮内膜に着床すること
この3つの条件が整うことで妊娠~出産に至り、
PCOSは②の排卵に負荷がかかっているためクロミッドで②を改善しても
続けていくうちに①と③に悪影響を及ぼしていしまうことで妊娠力が落ちてしまいやすいのです。
そうなってしまった場合、レトロゾールなどでの角度の違う排卵促進剤を使用したり
注射による排卵促進剤へステップアップすることもありますが、
クロミッドによる排卵に慣れてしまった身体はレトロゾールで上手く排卵できなくなってしまったり、
注射では高刺激過ぎて卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、
つまり卵巣内の卵胞が数多く育ちすぎて卵巣が腫れてしまうなどの状態となることも増えてきます。
↓こちらは
まさにそんな状況で排卵促進剤による不妊治療では悪循環で上手くいかなかった方が、
卵巣を労わる子宝漢方ですぐにご懐妊された症例です。
漢方では
Tさんの例では卵巣が疲れている状態だったため、卵巣を休ませ、本来の機能を取り戻す漢方でしたが、
前回まとめたように、東洋医学でのPCOSの原因は
・水毒(湿痰邪)
・排卵時の気の問題(気虚・気滞)
・長期の低用量ピル”
であり、Tさんの場合はこの中では排卵促進剤多用による”気”の問題を整えることで妊娠に至りました。
(厳密にいうと気と腎陰を消耗していたので気陰の問題でしたが)
いつも書いているようにPCOSという同じ疾患名を病院で言われたからと同じものを飲んでも
全員のPCOSを改善し、妊娠に至れるわけではなく
PCOSはあくまで終着点であり、
その原因に合わせないとその問題を解決できないというのが東洋医学の考え方です。
ということで、水毒・気(陰)・ピルの原因分けに合わせて漢方をお飲みいただきます。
水毒などと簡単に書いていますが、その中には
サラサラ質の湿邪、水分が飛んでネバつき水毒の痰邪、
それらに老廃物が混ざり淀んだ濁邪などがあり、
それらは同時に存在することもあり、それぞれが熱性や寒性、平性を持っています。
↓そういった水毒邪をやっつける生薬の参考
利湿を含めない化痰剤だけでもこれだけあります。(日本で一般的に使用していないものも多いが)
水毒の漢方薬で有名なものには五苓散がありますが、
淡滲利湿薬だけでは動ききらないPCOSの毒邪の方が多い為、
水毒ならどんな利水剤でも良いのではなく、
PCOSの性質に合わせた漢方薬を飲む必要があることが分かるでしょう。
また、気の問題と言っても
卵巣の気虚状態や卵巣の気滞状態、肝気鬱による排卵抑制などもあれば
Tさんの様に気だけでなく腎陰虚も絡んだり、血虚が絡んだり
気虚は水毒も生みやすい為、上記の水毒に対するお薬も併用することもあります。
また、ピルを長期間服用したことが原因でのPCOSは
それこそ状況が様々で、卵巣の気を補充することもあれば、
卵巣への血流を改善したり、卵巣の血を補ったり、
卵巣の粘膜の質を高めたり、粘膜の汚れを取ったり
ピル服用前から水毒があることでPCOSの場合もある為、
ピル服用だけに惑わされず本質である水毒にポイントを合わせたり多様です。
結局、この記事を読んでもPCOSの方が飲んだ方が良い漢方薬は書けませんが
(柴苓湯、香砂六君子湯、藿香正気散、ショウキT1、柴陥湯などを使うことは多いが)
結局はその人それぞれの状態に合わせていかないといけないということです。
病名などが一緒でも、その人に欠けた部分や必要なピースは人それぞれというわけです。
そのそれぞれに合わせていくのが相談を介さないとできないことであり、
1つの薬効に特化したものでなくバランスを取りながら身体に合わせるために漢方薬が優れています。
漢方薬によるPCOSでの不妊治療は、状態がまだまだ整っていない時は排卵が遅れ
月経周期が長くなることもありますが、
子宮内膜は薄くせず、かつ卵巣を労わることで卵子の質を高めながらの妊活を支援できるため、
先ほどの①~③を全体的にフォローすることで、
PCOSの状況下でも妊娠に至ることをサポートできます。
PCOSでは排卵できず月経周期が長くなったり
肌荒れが強く出たり、多毛になったり、男性ホルモンが増えて体型もガッチリしてくるなど
女性にとっては嫌な症状のオンパレードです。
そういった症状や、身体を労わりながら赤ちゃんを育める環境作りには
漢方が良いでしょう。