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平成堂薬局

PMS(月経前症候群)と漢方薬

2026年07月21日

  1. PMS(月経前症候群)とは
  2. 当薬局の治療法
  3.  PMSに対する16の漢方薬
  4. PMSに対する個人的見解

PMS(月経前症候群)とは

PMSは生理前のイライラなど「生理前の情緒不安定」と受け止めている人も多いですが、
PreMenstrual Syndromeの略で直訳は月経前症候群となり、つまり生理前の不快症状全体を指します。

 

症候群とあるように医療の分野では病気とされていない症状ですが、生理が来るのが嫌になるほど強い症状や色々な症状に悩まされている人もいます。

 

主な症状・特徴

情緒不安定の中にはイライラ・不安感・落ち込み・涙もろい・無気力等があり、精神症状の他には頭痛、倦怠感、眠気、胸の張り(痛み)、吐き気、お腹の張り(痛み)、のぼせ、むくみ、肌荒れ、便秘(下痢)、不眠、過食、風邪をひく、腰痛、めまいなどがありますが、これらもあくまでPMS症状の一部です。
 
PMSで困っているほとんどの人がこの多数ある中の症状を何種類も併発しており、PMSという括りは同じでも感じている症状は十人十色です。

 

PMS自体は病気ではないため“症候群”とされていますが、場合によっては生活や仕事がままならないほど強い症状が出てしまうこともあります。が、貧血や高血圧のように検査を通した数値化されたものに異常は現れないことがほとんどで、ご本人の訴えが診断の基準となります。

 

そして、PMSはホルモンバランスやホルモン受容体の機能により生じるため、そうしたそれぞれの症状の出方や強弱などは女性機能を見直してという体の中からの悲鳴として発現したものであると考えられます。

 

また、生理前でない時には落ち着いている症状であるため、漢方相談による体質改善にて高確率で緩和する症状でもあります。

 

不妊の漢方相談の場合もPMSを抱えている方は多く、そのほとんどが生理前のホルモン変動に伴う不調であるため、PMSの症状を参考に妊娠力を上げる方法が見えてくることもあります。

西洋医学での治療法

PMSで悩む女性は多いにも関わらず、現在の西洋医学においては基本ピルで本来の月経を止めることしか方法がありません。

 

ピルを服用すると排卵はしなくなりますし生理のような出血はありますがこれは見せかけだけの出血で生理ではありません。

 

つまりPMSに対してのピルは本来の治療法とは言えず、妊活中の人はピルを飲むと妊娠することもできません。

 

精神症状が強い場合にはSSRIなどの抗うつ剤や精神安定剤を出されたり、頭痛には鎮痛剤、めまいには眩暈止めなど各症状に応じたお薬を対処療法で出されることはありますが、漢方専門ではないにも関わらずピル以外で処方されている数が多いのは加味逍遙散でしょう。

 

つまり現代の西洋医学ではPMSに対応することはあまりできないということです。

 

東洋医学でのPMSの考え方

対処療法が得意な西洋医学ではPMSに打つ手がないため加味逍遙散を使用することが多いのですが、本来漢方薬は対症療法ではなく弁証し原因に合わせ処方すべきです。

 

にも関わらずPMS→加味逍遙散などの対処療法的な使い方をしてしまっては意味がありません。

 

逆に言うと根元がホルモンバランスにはあるはずですが、症状が多岐に渡るという状況こそ、それぞれの症状に応じたお薬を飲むのではなくご症状の原因に向けた本治療が得意な弁証を伴った漢方薬の出番というわけです。

 

東洋医学の本来の見方である四診から弁証し、それに対応した漢方薬の処方にて多くのPMSのお悩みは解決できます。

 

全部の症状が1つの処方で改善するとまでは言いませんが、1つの処方を軸とした若干の加味法で多くのPMSのご不調は改善します。

 

五臓で表現すると自律神経やホルモンバランスの調整役である「肝」が全てではないですが、軸になることがほとんどです。

 

肝を軸に胃腸症状は「脾」、睡眠や精神負担が強い場合は「心」、そもそも生殖機能の低下に伴う症状は「腎」との関りを意識します。

 

また、加味逍遙散がそうであるように「気・血・水」でいうと「気」が主であり柴胡剤が多用されがちですが、肝の中でも肝血不足や瘀血、また気滞や血虚の裏に気虚や水滞、陰虚があるなどの状態にも合わせないと症状が好転しないこともあります。

 

あくまでご自身が体感している症状を基に陰陽・五臓・気血水などの原因に合わせた漢方薬をお飲みいただけましたら、生理前のご不調が軽くなり気持ちよく生活できるようになるでしょう。

 

PMSと加味逍遙散

加味逍遙散も悪いお薬ではありません。実際、一番多く飲まれていることで改善している例もとても多いこともあり、それこそ一番症状を改善しているお薬の可能性が高いです。

 

ただそれは、PMSに対して色んな漢方薬がある中で一番数多く効いたものを使用しているだけで、これをお読みのあなたに合っているかというとそうではない可能性の方が高いです。

 

例えば100人のPMSに困っている方がいた場合、色々な漢方薬を使用してみたところ、加味逍遙散は15人に効果がありました。次に効果があったのは12人に抑肝散、9人に大柴胡湯、8人に・・・というように漢方薬の中では一番効果が見られたものは加味逍遙散かもしれませんが、弁証をして体質に合わせてお出ししたわけではないので半数以上に効果があったわけでもないのです。

 

数としては一番多いからPMSにはコレ!ではなく、PMSという括りではなくなぜPMSを生じているのかという体内分析を基にお薬を選定した方が良いということです。

 

PMSと命の母

同じように市販品では「命の母」もPMSに良く飲まれているお薬だと思います。

 

構成を見るにやはり女性ホルモン(というよりはホルモン受容体の反応の正常化)に対しての生薬が配合されていますが、それほど珍しい成分は入っていません。

 

命の母も正式な弁証の元ではないため効果を感じない人も多いですが、それでも効果を感じる人も一定数います。

 

ただ、大黄が配合されているために腹痛&下痢を催しやすいという欠点があるため、そういったことでも漢方相談で自分に合ったものを求められるケースも多くあります。

 

また、加味逍遙散も命の母も服用している分母が大きい分、効果が見られない人も多いです。

 

そうした方々は漢方があまり合っていないなどではなく、やはりしっかりとした弁証の基導かれた漢方薬を服用することが望ましいでしょう。

 

当薬局の治療法

それこそ、当薬局に相談に来る前に加味逍遙散や命の母を服用したことがあったけどイマイチ、という人がご相談者のほとんどですので、加味逍遙散を使用することはあまりありません。

 

その代わり、加味逍遙散で冷えを始めとしたPMS症状が助長されてしまっている人も実は多数いて、加味逍遙散は使いませんが、逍遙散はよく使用します。

 

また、逍遙散の柴胡・薄荷などだけで動くほど気の停滞が軽くない場合は大柴胡湯(もしくは大柴胡湯去大黄)や柴胡疎肝湯なども使用します。

 

血虚傾向がある場合は四物湯を加味しますし、柴胡剤の乾かす作用が良くない場合は香蘇散を使用します。

 

以下に私が良く使用する方剤とその簡単な説明をまとめています。

 

 PMSに対する16の漢方薬

逍遙散(加味逍遙散)

構成:当帰、芍薬、白朮、茯苓、柴胡、甘草、生姜、薄荷(加味逍遙散はこれに牡丹皮・山梔子が加わる)
 
PMSや更年期障害など、女性ホルモンと関わる不快症状に対し一番良く使用されれている漢方薬。

 

逍遙散に牡丹皮・山梔子を加味したものが”加味”逍遥散。加味逍遙散の方が保険適応もされているためより良く服用されているが、牡丹皮・山梔子は簡単に言えば涼血を強めるものなので、イライラが強くそれに伴う熱症状が強い場合には良いが、逆に冷えが強い方には加味逍遙散は向かず、逍遙散の方が使い勝手は良い。

 

柴胡剤の仲間で肝気を巡らせる配慮をしつつ、肝血も補い、かつ肝気鬱からの熱化(緊張や興奮)を落ち着かせる作用があり、かつ脾(消化器官)への配慮も含めた処方。

 

PMS症状の中でも精神的負担が強い場合に使用することが多く、特にイライラが強い場合に多用される。しかし落ち込みや不安へも効果があり、胸の張りや腹部の張り、首肩こりからの緊張性頭痛等、張りを伴う症状の緩和にも向いている。

 

そのことからもわかるように、気血両虚というベースがありながら筋肉がないからこそ常に過緊張を引き起こしやすい方に向いている。現代人は運動量が少なく、特に女性は月経で血を消耗し、筋肉も少ないため、逍遥散の適応タイプは多い。

 

 

抑肝散(抑肝散加陳皮半夏)

構成:柴胡、釣藤鈎、川芎、当帰、茯苓、白朮、甘草(加陳皮半夏には陳皮、半夏が加味される)

 

逍遙散に似ている構成で、それ故に抑肝散もPMSに良く使用される。逍遥散がやや気鬱からの熱を生むことに対し、抑肝散は内風という体内に風を生む状態に向けられる。

 

”内風”とは自然の風のように強くなったり弱くなったり上下左右前後など自由奔放にあちこちに動き回る様を表現したもので、人の状態で言うところではイライラ・不安・落ち込みなどの感情の変動がとても盛んなことと、急な変化をはらむものである。

 

また、内風は感情だけでなく震えやピクツキなどの動きに影響することもある。気を使いすぎて目の周りがピクつくなどはその最たる例である。

 

抑肝散に陳皮と半夏を加えたものがその名の通り抑肝散加陳皮半夏だが、抑肝散は胃腸の負担が強い場合は抑肝散加陳皮半夏となっている。が、個人的には胃腸の負担のあるなしよりも理気化痰作用を重んじ、苔の厚さなどを考慮して使い分けることが多い。

 

また、抑肝散に対して芍薬を加味し、筋肉緊張を和らげる方とより良い。

 

逍遙散は沸々とした怒り、抑肝散は前触れもなく急に怒りや悲しみが襲ってくるなどの使い分けと言われるが、絶対ではない。

 

 

柴胡桂枝湯

構成:柴胡、 半夏、 桂枝、黄今、人参、芍薬、生姜、大棗、甘草

 

普段は胃腸症状に使用されることが多いが、これも自律神経の負担により胃腸に影響を及ぼすことに対して使用することが主で、自律神経に対して使用するようにホルモン変動の激しいPMSにも応用される。

 

ただ、肝血に対しての対応がほぼなく、状況に応じて補血・活血などの漢方薬と組み合わせるべきである。

 

また、逍遥散との使い分けの際、どちらもストレスの影響で症状が出るタイプに使用するが、逍遙散は周りの人や環境などに影響を受けやすいタイプに使用し、柴胡桂枝湯は周りよりも自分の中に対して怒りや悲しみを持ちやすいタイプに使用するとも言われている。

 

 

大柴胡湯

構成:柴胡、半夏、黄芩、芍薬、枳実、大棗、生姜、大黄

 

逍遙散よりも気の鬱滞が強く、気滞というよりは気結、つまり気持ちが結ばれているくらい頑固なタイプに使用する。

気の結ばれが強い分、頭に血が上る度合いも強く、熱を発散する配合もなされている。

 

その熱が腸に影響することもあり、それを大黄にて瀉熱の意図があるが、便秘の人もいるが普通から軟便~下痢の人も多く、その場合には大黄を抜いた大柴胡湯去大黄の方が望ましい。

 

命の母も同様にこの大黄の配合により腹痛下痢を生じ、服用しにくい人もいるだろう。

 

しかし大黄は割と大事なので、大黄によりよほど腹痛・下痢が強くないのであれば大黄配合の方がPMS緩和には良い。

 

 

柴胡疎肝湯(四逆散)

構成:柴胡、芍薬、枳実、甘草、香附子、川芎、青皮(四逆散は香附子、川芎、青皮を抜いたもの)

 

大柴胡湯のような熱化は見られないが気の停滞が強いタイプに使用することが多い。

 

個人的には柴胡・芍薬・枳実・甘草の4味は気の停滞を動かすことに特化しており(四逆散の構成)、ここに青皮・香附子で気を巡らせる作用を強め、川芎で血も合わせて巡らせる作用を強めた柴胡疎肝湯はよく使用する。

 

気分の浮き沈みよりも生理前での胸の張りや首肩こり、またそれからの頭痛・めまいなどを中心に使用することが多い。

 

生理で強まることが多いが、特に生理に関わらず首肩こりなどの気の停滞が強いタイプには私はよく使用している。

 

肝血不足も見られる場合は四物湯などを加味する。

 

 

柴胡加竜骨牡蛎湯

構成:柴胡、半夏、茯苓、桂皮、黄芩、大棗、人参、竜骨、牡蠣、生姜、大黄

 

柴胡をベースに竜骨牡蛎が配合されているため、緊張はありながらより興奮が強い場合には柴胡加竜骨牡蛎湯を使用する。

 

昔はイライラしやすい人は”カルシウム不足”と言われていたが、竜骨・牡蛎には多くのカルシウムが含まれており、鎮静作用がある。

 

生理前にイライラや焦り、不眠症状が強まる場合に良い。

 

エキス剤では小太郎漢方では大黄が含まれ、ツムラでは大黄が含まれないため、大黄により腹痛下痢を生じてしまう場合にはツムラを使用している。

 

 

香蘇散

構成:香附子、蘇葉、陳皮、生姜、甘草

 

①~⑤は気を巡らせる作用が強い分、傷陰してしまうことがある。肝血不足や陰虚の場合はそうした傷陰が気の停滞を助長してしまうことがあるため、柴胡ではなく香附子を中心とした香附子は重宝される。

 

柴胡剤ほど理気作用は強くないものの、広範囲で気のムラを無くす良薬だと認識している。

 

 

桂枝加竜骨牡蛎湯

構成:桂皮、芍薬、大棗、牡蛎、竜骨、甘草、生姜

 

これまでの理気剤ベースではなく、虚労に向けた構成であるため、典型的なPMSのイライラなどではなく、不安感や落ち込み、気力低下、疲れやすい症状などに使用されることが多い。

 

PMSの薬としておきながら、PMSでも使うが、月経中や月経後の疲労感や気力低下、不安感、落ち込みが出る場合に使用することの方が多い。

 

 

帰脾湯(加味帰脾湯)

構成:黄耆、酸棗仁、人参、白朮、茯苓、竜眼肉、遠志、大棗、当帰、甘草、生姜、木香(加味は山梔子、牡丹皮)

 

PMSの中でも不安感や落ち込みなどのネガティブな感情が強く、一人で思い悩んでしまう方に使用することがあります。

 

疲労感、不眠が出やすい場合にも使用しますが、脾不統血、つまり月経以外での不正出血などにもよく使用します。

 

不正出血の認識がなくとも、今までは1,2日目が出血のピークだったのに最近、1~2日以上生理とは言い難いほどの少量出血が続き、その後本格的な出血が始まる場合、実はこの不正出血にあたる場合があります。

 

 

甘麦大棗湯

構成:甘草、大棗、小麦

 

ヒステリーやノイローゼなどの感情の起伏が激しい場合に使用することがあります。

 

他と比べよく見られる随伴症状としては生あくびや生理前の甘いものを欲する強さが尋常じゃなく強い場合ことなども考慮し、また、感情のタガが外れているからか、ご相談を介していると感情とは裏腹に目が笑っているような怖い印象を持ちます。

 

 

桂枝茯苓丸

構成:桂枝、茯苓、芍薬、桃仁、牡丹皮

 

処方構成を見ると理気剤の配合はなく、使用しても多くのPMSで見られる精神症状緩和には繋がりにくい。

 

しかし、逆に「PMSの漢方薬≒理気剤」としか考えていず、ひたすら理気剤を使用しても効果が見られない方に著効する例もある。基本は冷えのぼせやイライラなどの気逆に対してのPMSに対して使用する、とされているように気逆の対応と瘀血にホルモンの感受性が乱れている方には良いと考えている。

 

元々は下腹部の血行が悪くなり”癥瘕”と呼ばれる血の塊、つまり瘀血ができたことで生じる不調を改善する漢方薬。

 

PMSに対して使用することはあるが、生理時の経血の色や質、塊などで下腹部に瘀血があるかどうかや舌診などでの瘀血の所見を活かすことが大切である。

 

しかしながら桂枝茯苓丸単剤のみでPMS対応は難しい。

桃核承気湯

構成:桂枝、桃仁、大黄、芒硝、甘草

 

桂枝茯苓丸と同じく、桂枝を含む他は駆瘀血剤が主で構成されている処方。桂枝茯苓丸と比べ、より冷えのぼせやそれとともに生理前のイライラが強い場合に使用する。

 

桂枝茯苓丸より効果的という表現だが、大黄・芒硝の配合があり瀉下することで即効性を求めた処方であるため腹痛・下痢が見られることも多く、便秘な方には良いが、元々お腹が弱い人には向かない。

温経湯

構成:当帰、川芎、桂枝、芍薬、甘草、人参、麦門冬、阿膠、半夏、生姜、呉茱萸、牡丹皮

 

理気剤、つまり自律神経の興奮を落ち着かせる配合ではなく、瘀血への対応とそれと共に下腹部を中心とし下半身を温める方剤。
 
桂枝茯苓丸・桃核承気湯と同じく、下腹部の瘀血がホルモンの感受性に悪影響を及ぼしているために生じるPMSに対して使用し、唇の渇きや冷え体質なのに手の平や足の裏が火照る体質に著効する。

 

阿膠や麦門冬、人参等の配合により滋陰・生津作用の配慮はあるが、温めて瘀血を除去するため、身体としては乾かす作用が強く、四物湯や六味丸などの補血剤や地黄剤と併用することが多い。

 

 

芎帰調血飲第一加減

構成:当帰、地黄、茯苓、烏薬、牡丹皮、大棗、生姜、川芎、白朮、陳皮、香附子、益母草、甘草、桃仁、紅花、枳実、桂皮、牛膝、木香、延胡索、芍薬

 

構成生薬を見てわかるように、とても多くの種類の生薬が使用されている。補血剤・駆瘀血剤・補気剤・理気剤・利水剤など多種使用されており、産後にとても優れた効果をもたらす。

 

しかし、産後に限らず婦人科疾患を中心とし幅広く使用されており、もちろんPMSにも頻用される。

 

ただ、幅広い分効果がマイルドな印象があり、PMS症状や体の状態に応じ、他の方剤で加減するなどが望ましい。

 

 

女神散

構成:当帰、川芎、桂枝、黄連、黄芩、檳榔子、人参、甘草、白朮、木香、香附子、丁子、大黄

 

効能効果を見ると加味逍遙散に近しいことの記載があるが、加味逍遙散は「逍遙」とあるように症状が入れ代わり立ち代わりなことが多いが、女神散は決まった固定症状が強く出るタイプに使用することが多い。

 

それもそのはず、加味逍遙散などの柴胡剤は肝が主で、肝は変動に激しい性質を持つが、女神散の目的は心火を降ろすことに重きを置いている処方構成。心の性質は肝と違い頑固であるため、使い分けの参考としたい。

 

PMSではないが更年期症状にもよく使用され、下垂体から分泌されるFSHが過剰になっている場合、これはつまり脳(五臓では心)の過興奮状態にあるため、女神散が著効することも多い。

 

同じようにFSHが高まりすぎて無排卵だったり無月経の場合の不妊の方にも使用する。

 

 

温胆湯

構成:半夏、茯苓、生姜、陳皮、枳実、甘草、竹筎

 

食べ物や水や脂が解毒できず体内にはびこってできた汚れを漢方では”痰”というが、これは水や気の巡りを滞らせ、また「痰」という字に”炎”が入っているように滞ったことで産まれた火を蓄積する性質がある。

 

気の巡りが妨げられることでホルモンバランスが乱れPMS症状を強めてしまい、また痰により生じた火邪が興奮を産み、不眠や精神不安定さを産んでしまう。温胆湯はそうした状態に痰を除去し、余計な火邪も落ち着かせる働きがある方剤である。

 

理気作用もあるが、それよりも痰の除去に重きを置いた処方であり、血への作用は無いため、痰瘀互結などが見られる場合には駆瘀血剤と併用する必要がある。

 

PMSに対する個人的見解

PMSは基本、生理前に不調が強く、生理が来ると嘘のように症状が緩和します(一部の人は生理中も引きずりますが)。

 

つまり身体からのサインは大きく表れていて、生理前と生理中で何が違うかを整理すると、多くの原因が見えてきます。

 

プロゲステロンが原因?

その一つは誰しもが考えるホルモンバランス。

その中でも生理前はプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く出ており、これが悪者にされがちですが、何度も書いているように妊娠・出産するためには欠かせないとても大事なホルモンです。

 

西洋医学ではこのプロゲステロンを悪者として、プロゲステロンの元である排卵を止めてしまうことで症状を落ち着かせます。

 

無排卵になっても症状を感じる人もいますが、多くの場合はプロゲステロンが低くなったことで多くの不快症状が出なくなります。

 

しかし、プロゲステロンが十分に出ている人でも全くPMSが出ない人もいるわけで、個人的にはプロゲステロンが悪いのではなく、プロゲステロンの巡りと受容体が悪いとPMSが強く出てしまっていると思っています。

 

「プロゲステロンの巡り」とは、漢方で言うところの気の巡り、つまり気滞との関連性が強く、イライラ・落ち込み・不安などの気持ちの停滞・鬱憤が見られたり、胸張・腹張・頭痛(張りタイプ)などが強い場合に柴胡剤などで緩和するのはこのプロゲステロンの巡りが改善するためでしょう。

 

本来は子宮に働きかけ高温期を作り胚盤胞が着床していたら赤ちゃんを守るはずのプロゲステロンが、巡りが悪いことで漢方の考えである経絡に乗り胸や腹や頭などの張りを産んだり、吐き気やのぼせや脳の熱(興奮)を産み、イライラ~不眠などを産んでしまうのでしょう。

 

もう一つはホルモンの受容体、つまりホルモンという命令の受け取り手がうまく機能しないことで生殖機能が落ちてしまい、かつ不調が表れてしまう例です。

 

この場合の受け取り手もやはり気が関わることが多いですが、先ほどの巡りもですが気以外にも水滞や血虚、瘀血の存在が巡りや受け取り手の邪魔をしてしまうこともあります。

 

邪魔してしまっているものが何か、それを漢方相談で分析してあったものをご提案するわけです。

 

気・血・水の偏り

月経前症候群のプロゲステロン以外の原因のもう一つ、それは「血(気も水もですが)の偏り」です。

 

生理を考えた方がわかりやすいですが、生理は子宮からかなりの血を出血します。

 

つまり身体の状態としては一番血が少ない状態です。

 

逆に生理前は一番血を溜め込んでいる時でもあります。

 

そうした体に血が一番溜まり、また子宮に偏って多くなっているため、気や水も伴って偏りやすくなってしまいます。

 

それが生理前のむくみなどで、生理前に足のむくみが強くなる人はとても多いでしょう。

 

その他にも子宮に血が集まることで子宮はすごい頑張っている状態です。

 

逆に頭などはむしろ血が少なくなり貧血ぽくなったり、水の巡りが下肢に溜まることで三半規管や蝸牛などの頭の水の巡りが悪くなるとめまいや耳鳴りを産みます。

 

子宮で頑張っている血・気・水がある分、そのツケが他の身体に来てしまい、必要な気・血が少なめになることもあり倦怠感や眠気、疲労感などが生まれます。

 

こういった色んな症状は体からの「ここが弱っているよ!助けてくれ!!」という悲鳴であり、漢方相談はそれを聞き分け、それに合わせた漢方薬を提案するわけです。

 

どうしても「PMSの薬はありますか?」と気軽に聞かれてしまうのですが、こういった色々を考慮しての提案となるわけです。

 

それも時には服用してカラダに作用して初めて出てくる症状などもあり、始めから何でもわかるものではありません。

 

またそれにPMSは季節や湿度、気温、気圧、ストレスなどの影響も受けやすい症状であるため、今まで良かったものでも状況によって変更しなければならないこともあります。

 

PMSは漢方相談の得意分野ですが、漢方薬であればなんでもいいのではなく、自分に合ったものを選んでもらうことが大事で、最近はAIも発達していてAIに聞いてしまう人も多いでしょう。

 

それでよい例もあると思いますが、あくまでAIはまだネットの情報をまとめているだけのようで、漢方分野はかなり表面的だったり頓珍漢な答えが返ってくることがあるので、専門家としてはどうかと思っています。

 

また、余計なお世話かもしれませんが、PMSが出るということは「妊娠するための機能が何らかの形で阻害されているよ」というサインであるため、PMS自体に悩んでいなくても、妊活のためにも漢方の専門家に相談すべきだと思います。

 

いつも当ブログをお読みいただき

 

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平成堂薬局 漢方相談薬剤師 櫻井 大輔