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平成堂薬局

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舌痛症について

2026年08月20日

  

 

目次

  1. 舌痛症とは
  2. 舌痛症の原因
  3. 舌痛症の増悪・寛解要因
  4. 舌痛症の西洋医学療法
  5. 東洋医学での考え方
    1. 陰虚とは
    2. 舌痛症が陰虚由来である考察
    3. 粘膜の潤い不足が痛みを産むことのイメージ化
    4. 更年期以外での舌痛症の考察
  6. 舌痛症の漢方薬

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舌痛症とは

 

国際的には「口腔内灼熱症候群(バーニングマウス症候群)」とも呼ばれ、特に50代〜60代の更年期以降の女性に多く見られます。

 

命に関わる症状ではないものの、食に対して大きな弊害となるため、精神的苦痛が大きく、その辛さゆえに「死にたいくらいツライ」と表現される方もいます。

 

発症人数は以外にも多い割にあまり聞きなれない症状であるため、どこに受診&相談して良いかわからず、漢方相談に来られることが多い症状でもあります。

 

舌痛症の原因

舌痛症の明確な原因は判明していませんが、以下のような複数の要因が複雑に絡み合っているのではないかと考えられています。

  1. 神経の機能異常
    脳や神経の「痛みを感じるシステム」で異常を生じ、本来痛くない刺激を強い痛みとして脳に伝えてしまう神経障害性疼痛。
     
  2. 精神的ストレス・心理的要因
    仕事や生活の中での強い不安、正確で不安になりやすい方、不眠、日常のストレスなどが起因となり、痛みを産んでしまう。一度発症してしまうと舌痛症自体が「舌がん」ではないか、病院に行っても明確な治療法が無いため、「一生治らないかもしれない」という不安や、食事も美味しく食べられないストレスも積み重なることが痛みを強めるという悪循環を産んでしまいやすい。
     
  3. ホルモンバランスの変化
    更年期障害に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少が、口腔内の粘膜や神経に影響を与えている。
     
  4. 栄養素の不足
    健康な粘膜や神経を維持するために必要な「亜鉛」「鉄分」「ビタミンB12」などの慢性的不足。
     
  5. 口腔内の物理的刺激
    合わない入れ歯、尖った被せ物、歯ぎしり、ドライマウスによる粘膜の乾燥などが引き金となるケース。また、虫歯の治療後の詰め物などの金属に対しアレルギーを生じるケースもある。

 

このように原因や治療法が確立されていないにも関わらず、剥脱性口唇炎や間質性膀胱のように難治性疾患とされているわけでもなく、全体の0.7~2%ほどの方が罹患する可能性があり、つまり日本では数十万人レベルで原因不明の舌の痛みで悩んでいる人がいます。

 

そのことから、アトピー性皮膚炎や頭痛などのようなメジャーな疾患と比べても劣らないほど漢方相談数が多い症状です。

 

舌痛症の増悪・寛解要因

  1. 痛みと時間帯
     朝は比較的軽度で、夕方から夜にかけて痛みが強くなるなど、特定の時間帯で痛みの増減を繰り返す場合がある。
      
  2. 痛みの増減因子
    集中している時や、食事中・ガムを噛んでいる間は痛みが軽減・消失することも少なくない。
     
  3. 随伴症状
    口の渇き(ドライマウス)や味覚異常(味が薄く感じるなど)を伴う人もいる。
     

あくまで傾向であり、時間帯に関係なく症状が見られる人もいます。

食事で症状が和らぐ方もいますが、逆に塩分の濃い食事で症状が痛みが増す場合もあります。

 

舌痛症が強まると精神的負担が強まり、精神的負担がより痛みを助長することもあります。

 

舌痛症の西洋医学療法

治療の第一歩は、視診や血液検査によって「舌がん」「口内炎」「口腔カンジダ症」など、他の病気が無いことを確認する、つまり除外診断から始まります。

 

「がんではない」と分かるだけで不安が消え、痛みが和らぐ患者さんもいることと、「舌痛症」は確定的な所見や検査項目が無く、その人の訴えのみを参考に治療するためです。

 

そうした上で行う治療法は以下があります。

 

  1. 薬物療法
     
    抗うつ薬・抗不安薬: 脳の神経の混線を調整し、痛みの信号をブロックする目的で少量から使用(うつ病の治療ではなく、痛みの緩和目的)
     
    漢方薬: 体質に合わせて、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)や加味逍遙散(かみしょうようさん)などを処方
     
  2. 歯科的アプローチ・口腔ケア
     
    痛みの原因となっている入れ歯や被せ物の調整・研磨
     
    保湿ジェルや人工唾液を用いたドライマウス(口腔乾燥)の改善
     
  3. 栄養素の補給
     
    血液検査で不足が認められた場合、亜鉛製剤、鉄剤、ビタミンB群のサプリメントや医薬品を使用する。
     
  4. 心理療法
     
    認知行動療法などを通じて、痛みに対する過度な意識や不安を和らげ、上手につきあっていく形を見つける。

 

こうした4つの治療法があります。

 

しかし私が相談にのってきた方のほとんどは碌な説明がなく向精神薬(主にリボトリール:クロナゼパム)が出され、その中には痛みは軽減した方もいましたがリボトリールの副作用でより悩んでしまう方も多くいました。

 

病院で漢方薬の提案もあるように、検査結果や所見では異常が見られないため漢方薬が出されるケースもありますが、口腔外科や歯科が専門であり漢方専門でないところでは対処療法的な気休め処方で終わってしまい、改善が見られずこちらに相談に来られることが多くなると考えられます。

 

東洋医学での考え方

状況的に女性の更年期以降に発症しやすいことが多いということやドライマウスなども伴うことも少なくないことから、漢方では舌痛症は基本的に”陰虚”と”火邪”から生じていると考えられます。

 

そしてそのほとんどが”陰虚”由来です。

 

陰虚とは

”陰虚”とは簡単にいうと体内の潤い不足を表現したもので、舌痛症の場合は舌粘膜の潤いが少なく・薄くなってしまい、過敏になっている状態です。

 

更年期は閉経周辺時期を意味しますが、「閉経≒卵胞(卵子)が全て排卵された状態≒陰虚」と捉えることができ、舌痛症だけでなくシェーグレン症候群やホットフラッシュ、不眠症、イライラ・不安などの精神症状なども全て潤い不足の陰虚から来ている症状です。 

 

舌痛症が陰虚由来である考察

舌痛症が見た目で炎症が強いわけではないことが多い理由は、火邪よりも陰虚が原因であることが多いためです。(火邪がメインだと赤味などの所見が強い)

 

「陰虚≒潤い」不足と表現しましたが、潤い≠水ではなく、脂なども関わる粘膜性の潤いが関わります。

 

ですので、潤い不足だからといくら水を飲んでも症状は緩和しません。

 

食事により痛みが緩和することは粘膜が薄くなっていることと矛盾していると思う人もいると思いますが、食事を摂ると体は胃酸などの消化液からカラダを守るために無意識化で粘膜を張ります。

 

舌も消化器官の一つであり、「食事→胃や口腔粘膜強化のスイッチが入る→痛みなどの刺激が軽減する」という流れで食事による刺激よりも粘膜で保護される方が上回るため、痛みが軽減するわけです。

 

しかし、それでも粘膜よりも刺激が強い香辛料や塩分が高すぎるものに対しては痛みを悪化させてしまうため、食事中でも粘膜が弱い人は食事によりむしろ痛みが強まります。

 

朝の方が症状が軽く夜の方が症状が強まりやすい傾向も、日中は陽の時間であり、夜は陰の時間であるため、陰が重要になる夜になるほどに症状が強まるというわけです。

 

粘膜の潤い不足が痛みを産むことのイメージ化

肌のどこかの薄皮が一枚捲れてしまうと、少しの風ですら沁みて痛いですね。

 

皮膚が一枚剝げただけの状態は打撲や傷と違って炎症は強くなく、守るものが無くなっただけの状態です。

 

たったそれだけで何かしていても気になるほど痛みはあります。

 

舌痛症の痛みも同じで、舌を守る粘膜が無い、もしくは薄くなってしまっている状態は刺激に対して無防備です。

 

肌でいう皮膚表面がはがされた状態になっているのが舌痛症の考えの軸であり、いかに舌粘膜を強めるかが治療の鍵となります。

更年期以外での舌痛症の考察

更年期でなくても舌痛症を発現することもありますが、その場合の多くは心労や不眠が続いたことや向精神薬を長期で服用した場合の心陰虚や心火、もしくは辛い物などの刺激物を長年に渡り摂り続けたことで生じる胃陰虚によるところが多いです。

 

ただのストレスや自律神経が弱まっただけでは舌の痛みにはなりにくいです。

 

というのも、舌は「心の竅」であり、心の病変が舌に出ることは多く、また舌は消化器官の始まりであるため脾胃の陰虚が舌にまで影響することもあるのです。

 

私の経験では舌痛症に関わらず長い間向精神薬を服用している人の舌の所見は鏡面舌だったり裂紋が深く長く多く存在するなどかなり陰虚が強まっている印象が強いです。

 

向精神薬が陰を乾かす作用があるということに加え、向精神薬で精神状態は安定していてもそれは薬により制御されたものであり、心の中では心火や肝火が常にくすぶっている状態を隠しているため長い間で陰虚を強めてしまっているのでしょう。

 

そのため逆に舌痛症の人に心理緩和療法でリボトリールを始めとした向精神薬が出されることがあり、それも緩和することも多いですが、根本治療とならず陰虚を強め、薬を止めると舌の痛みが強く感じやすくなってしまうこともあります。

 

舌痛症の漢方薬

次回に続きます。