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処方解釈〈補中益気湯〉②
2026年03月23日

の続きです。
〈処方名から考える補中益気湯〉
名前にあるように“中を補い気を益す”処方なのですが、まず中とは何でしょうか。
これは主に意味するところとしては体の真ん中に当たる“脾胃”、つまり「胃腸」であり、気は元気や体を動かすためのエネルギーを指します。“益”は「ためになる」「もうけ」などの意味がありますが、つまり気を益すとは気を補うということです。つまり補中益気とは、脾胃(胃腸)の弱りを回復し、元気にする漢方薬、ということです。
先に書いたように、疲れている時に服用したにも関わらず効果が見られない、といった時、原因として多く考えやすいことは脾気虚からの疲労ではなく、気の巡りの悪さからの疲労が多いでしょう。
例としては「疲れやすい」とはいうものの、仕事はデスクワークばかりで脳は疲れているけれど、身体は疲れるようなことはあまりしていない状態です。もちろん脳を使いすぎてオーバーヒートしてしまっている場合は、先ほどの脳の過亢進により疲れ、また脳に熱を生じてしまっていますが、そうでない場合の多くはデスクワークにより首・肩のコリや目が疲れることを「身体の疲れ」と体感してしまっていることがとても多いように思います。
その場合、食欲はむしろ旺盛で、とても脾気虚といえる状態ではないことが多く、やはり凝りを中心に訴え、凝りから頭痛や頭重症状を訴えたり、子泣き爺が乗っているかのように肩が重たいことを“疲労”と表現しており、葛根湯であったり柴胡剤、もしくは血行改善薬の使用で疲労感が緩和していきます。
補中益気湯の効く場合の疲労は脾気虚と繰り返し書いておりますが、脾気虚状態を示す症状としては「食欲減退」・「食べたらすぐ満腹」・「消化不良」・「食後眠気が強い」・「食後泥状便が出やすい」「四肢が怠い」「胃下垂などのような内臓下垂感」が主でしょう。
胃腸の弱り、というところから「胃もたれ」や「食欲低下」、「消化不良」などは想像しやすいと思いますが、臨床的に考えると「食後の眠気」や「四肢の倦怠感」、「内臓下垂」、「すぐ満腹感になる」などが補中益気湯で買い依然できる脾気虚として考える大きな要素と考えています。
また、脾には「統血作用」というものがあります。”血を統べる働き”つまり血が漏れ出てしまうことを防ぐ働きの一端も、脾が統率しているというわけです。
症状としては不正性器出血、内出血、鼻血、歯茎出血などの出血傾向がある場合、脾虚が絡んでいる場合には補中益気湯により脾を補い、脾統血作用を高めます。
思慮過度などの出血傾向は帰脾湯が関わることが多いですが、生まれつき体が弱く出血傾向にある場合にはかなり補中益気湯により身体を守る働きは重要であり、元々の体質の場合はずっと体を強める目的で服用し続けた方が良いでしょう。
添付文章には「不眠」ということは書いていませんが、寝ることにも実は体力を使います。また脳に”火”があると興奮していて寝つけません。眠れない人が眠いのになぜか眠れない負の連鎖に陥ってしまうことがありますが、この場合は疲れているからこそ脳の興奮を沈められず、さらに眠れない状態というわけで、そうした時は補中益気湯により睡眠の質が上がるでしょう。
また逆に、睡眠などに困っていず、ただ疲れが取れないといった方が「補中益気湯を服用し始めてから日中の眠気を感じやすくなった」と言われることがあります。これは眠気を感じさせる働きがある訳ではないのですが、自分で感じていないもののカラダは休息を欲しており、補中益気湯はその休息を本来通り取るために眠気として身体に働きかけています。
眠気を感じるままにしっかり休むとそうした眠気は感じなくなり、つまり疲れも改善します。
ただ、「寝ても寝ても眠い」場合は寝ることが逆に体力消耗を促進したり頭への血行が悪いことで寝れば寝るほど眠いという例ですので、補中益気湯を飲んで眠くなることとは別で、その場合は体をしっかりと動かし頭はもちろん身体全体の血行を改善したり、身体のオンオフのメリハリをつけると改善するでしょう。
平成堂薬局 漢方相談薬剤師 櫻井 大輔
