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処方解釈〈補中益気湯〉③

2026年03月30日

の続きです。


〈類似方剤鑑別〉

類似方剤には六君子湯類、茯苓飲、人参湯(理中湯)、参苓白朮散、啓脾湯、十全大補湯、人参養栄湯、帰脾湯、紫華栄などがあるでしょうか。

六君子湯と補中益気湯を比較するにはまず四君子湯を知りましょう。四君子湯は白朮、人参、甘草、茯苓から構成される脾虚・気虚を回復するベースとなる処方です。そこに二陳湯(陳皮・半夏)という湿痰を去り胃腸機能を高める効果を高めたものが六君子湯であり、それとは別に四君子湯ベースに黄耆etcを加え参耆剤となり補気作用や昇堤作用を強めたものが補中益気湯というわけです。

つまり六君子湯と補中益気湯の違いは、湿痰の存在と気を上げる効果の違いが大きいです。体調でいうなら六君子湯は胃もたれや食欲低下、またその際に吐き気・ゲップなどの気持ち悪さを伴うことが多いです。補中益気湯の場合は同じく胃もたれ・食欲低下はありますが、上に持ち上げる力が弱まっていることから吐き気やゲップなどの症状はあまり見られず、むしろ食後すぐ便意を催すなど下方向に働きがちな状態が目安となります。

つまり「胃もたれ」においてももたれて下に重い感覚があるなら補中益気湯、もたれて吐き気ゲップなどのみぞおちより上に症状を感じやすい場合は六君子湯という理屈となるでしょう。

また、どちらも疲れやすい等の訴えはありますが、六君子湯は胃の不快症状が主であり、補中益気湯は全身の疲労感や特に四肢などの倦怠感などを訴えることも識別ポイントです。

また舌診では、六君子湯は二陳湯を含み、つまり湿痰に向けているので舌苔が厚めだったり、舌形で歯痕などが見られやすい傾向にあります。

茯苓飲と補中益気湯はあまり類似方剤として挙げられないかもしれませんが、六君子湯と茯苓飲は良く比較されます。ですので六君子湯の処方解説の時に詳細を書きますが、茯苓飲は胃酸が逆流しやすいなどのミゾオチ部分の停滞感とそれに伴うゲップ・吐き気の突き上げる症状に良いでしょう。

また、個人的には胃の疲れに対し教科書通りの六君子湯であまり効果を感じたことがなく、補中益気湯や茯苓飲を良く使用しております。病院処方では疲労には補中益気湯、胃の疲れには六君子湯を出している印象があります。

参苓白朮散・啓脾湯も四君子湯がベースの補気剤です。その四君子湯に山薬や蓮子、扁豆などの津(陰)を補うものも配合したり、沢瀉などの利湿作用のお薬を配合しているものが参苓白朮散・啓脾湯です。個人的には啓脾湯はあまり使わず、脾の気陰両虚には参苓白朮散をよく使います。

脾陰虚と言われてもあまりわからないと思いますが、舌は舌が渇いていたり、もしくは潤っていても鏡面舌だったり、舌表に裂紋(亀裂)が入っていることや苔も厚くはないもののあまり根付いておらず、剥離苔がまばらにみられるなども指標となります。

人参湯も補気作用のある方剤ですが、これは乾姜というお腹を温める効果に特化したものとなります。内外問わずお腹が冷えてしまったときに下痢しやすいタイプの人の疲労や食欲低下などに良いです。補中益気湯は特にお腹を温める効果は強くありませんので、冷えたジュースばかり飲んで疲れてしまっている場合は人参湯です。

また、補気だけでなく補血作用なども強めたものが十全大補湯・人参養栄湯・帰脾湯・八珍湯となります。初めは気虚だけだったものの、気虚→脾虚となり、飲食物から血を消化吸収する力も弱まることで気虚は気血両虚になりがちです。また大病や手術などでも気血どちらも虚損してしまうなどの要素が重なります。

症状としては顔色が白っぽい、唇が淡白、爪色が淡白&爪が弱い、ふらつき、目の乾燥・疲労・視力低下、筋肉痙攣、経血が淡い・少ないなどが気虚症状と合わせて発症します。

それらが無い場合は補中益気湯、またそれらが出た際は十全大補湯を中心に、肺気の弱まりには人参養栄湯、心血虚には帰脾湯などで使い分けします。女性の場合症状に関わらず定期的に月経で血を失うため、月経周辺では補血作用を強めた方が良いことが多いです。

紫華栄は独特な方剤ですが、補気をベースにやや補血と紫根や十薬などの去邪剤も両立した処方となっております。一時的な疲労回復でも使用しますが、長い目で見た場合の慢性疲労体質の改善や疲労により老廃物が溜まってしまった人に向けられた処方となります。

疲れには補中益気湯、と考えがちで病院からの処方もそうしたことが多いのですが、簡単にまとめても最低でも以上のことを意識して処方選択すべきかと思います。

妊活においては女性に出る場合もありますが、どちらかというと精子の運動率が低い場合に牛車腎気丸と同じくらい補中益気湯が第一選択薬として挙がる印象があります。

しかし、特に胃腸が弱い所見が全くないことが多く、実際あまり効果が見られない例が多いように思います。お腹が弱いタイプで精子運動率が低い方には良いのですが。

また、補中益気湯は気血両虚などであっても長期に服用しても基本的には気を補うことや昇堤作用により身体を持ち上げたり治す効果を高める働きにより身体の治癒力が上がるという側面から、結果良い方向にいくことも多いです。甘草こそ含まれ、ネットでは長期服用は注意、とも書かれがちですが、専門家の基長期服用する分には全く問題ない処方と考えてよいでしょう。

平成堂薬局 漢方相談薬剤師 櫻井 大輔