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アトピー性皮膚炎の漢方考察②
2026年10月08日
11分で読めます。専門度★★★★★
アトピー性皮膚炎は今でこそ誰もが知る皮膚疾患ですが、その実ここ数十年で急激に増えた疾患です。
ステロイド剤が奏効することが多いのですが、ステロイド剤を中止した時のリバウンドやステロイド剤に抵抗感がある方もおり、漢方相談依頼がスタンダードに多い疾患です。
しかし漢方界隈でもアトピー性皮膚炎はかなり難しい疾患であり、その考察などをまとめていこうと思います。
目次
アトピー性皮膚炎の漢方治療で誤解しないでほしいこと
少しズレますが、皮膚科でも漢方薬が出されることもあります。
ですが、これは「アトピーには”温清飲”もしくは”黄連解毒湯”」などのようにアトピー性皮膚炎に対してはこれ、というものを出していることがほとんどで、これを「病名漢方」と表現します。
前回のブログに書いたようにアトピーとは「不思議な、変な」という意味があり、現代医学で分かっていないことが多い皮膚疾患の総まとめです。
原因が多種多様だからこそそういった病名がつけられているものを単一処方で治すということは、ガンでも風邪でも頭痛でもこれを飲んでいれば治るという万能薬を見つけることくらい無理な話です。
アトピー性皮膚炎ほどその人の体質、環境、病状により方剤が左右されるものはないので、病名漢方を飲んでも良くならなかった方こそご自身のアトピー性皮膚炎症状自体と向き合った漢方薬を模索すべきです。
同じようにAIや他の人の体験談で見つかるものではないので、専門家でさえ適した方剤を見つけ出すのは容易ではなく数度の相談を介して改善していくことも少なくないですが、アトピー性皮膚炎で生きづらい人には手を差し伸べられる分野でもあります。
漢方でアトピー性皮膚炎を理解する土台
アトピーは乾燥や傷、出血、汁、痒み、熱感、赤味、ゴワツキ、肌のツッパリなど症状は多様ですが、アトピー性皮膚”炎”とあるように、全ての症状は「炎症」から来ており、炎さえ落ち着かせるとその随伴症状も落ち着くことが多いです。
それぞれの病状を把握することも大事ですが、何よりキモの炎症を把握しないと始まりません。
炎を産む原因は大きく分けて”実”と”虚”の2つに分かれます。
急に現代医学からぐっと遠ざかった表現になりましたが、簡単に表現すると
「実=邪魔者がいる状態」
「虚=大事なものが不足している状態」
です。
日本漢方では「実=充実している、体力がある」という捉え方をしていることが多いですが、それは間違いです。
”虚”とは
精・気・血・津・液(津液をまとめて水と表記することもあります)などの、身体にとって必要なものが不足している状態が”虚”です。
具体例でいうと、肌に通う血が不足していると肌が乾燥し、ホコリやダニ、花粉などに過剰に反応しやすくなります。
血虚→乾燥→外側からの刺激に過剰反応により炎を生じる→アトピー性皮膚炎
このような流れが”虚”ベースにおいてのアトピー性皮膚炎の原則です。
イメージしやすさから血としましたが、これが気だったり水(津液)だったり、または五臓の弱りだったりします。
”実”とは
一方で”実”は、不足はないけれど邪魔になっている状態、つまり同じように血で説明すると血が集まりすぎて熱を産んでいる状態です。
血が集まりすぎる?と思うかもしれませんが、例えば頭にのぼせや蚊に刺されを想像しましょう。
のぼせは首以上に熱が昇って下りないことで熱感や赤ら顔を引き起こします。
また蚊に刺された痕は赤く腫れますね。
このように局所的な熱感や赤味は、血管が膨張し血が集まっているために生じます。
血は暖かいので、集まると局所的な熱を産み、そして血は赤いので集まると赤味を生じます。
このように不足して過敏反応を生じているわけでなくても、血が局所的に集まってしまうと炎症を生じるわけです。
それが頭に生じれば頭痛になり、肌に生じる場合はアトピー性皮膚炎となってしまうわけです。
内と外(表裏)
虚実以外にも内外要因も関係してきます。
”外”要素はハウスダストや気温差、細菌などであり
”内”要素は自身の気血津液などの虚実です。
外は実だけ、内は虚実の両方があります。
寒熱
内外の中でも邪の性質において寒性か熱性かの性質も重要です。
何度か書いているようにアトピー性皮膚”炎”なので局所的には炎症ですが、中には寒邪由来による炎症ということもあります。
もしくは熱邪だとしてもそれが実熱という本物の炎であることもあれば、虚熱という本当は熱性ではないのに体のバランスを整える上で仮の熱性を生じることでの熱邪ということもあります。
これらの虚実・内外・寒熱はそれぞれがアトピー性皮膚炎を紐解く上で重要です。
外邪に対しての漢方薬
外敵はその性質により風寒湿熱邪のいずれか、もしくはその混合型があります。
風邪は痒みを産みやすく、熱邪は熱感・赤味・腫れ・出血を、湿邪は肌汁や肌の凸凹を産みやすく、それぞれ単体というより混合型のことの方が多いです。
風湿熱邪の場合の基本は銀翹散で対処するのが教科書通りの漢方薬ですが、個人的には麻黄・石膏・朮の越婢加朮湯などの方が手応えを感じやすいです。
そして風寒湿邪の場合は風邪の漢方薬で有名な葛根湯。
そうです。
アトピー性皮膚炎でもあの葛根湯が著効することもあり、というか葛根湯などでないと改善が難しい場合もあります。
これが先に書いた「風邪の引き初めには葛根湯」が病名漢方であり、アトピー性皮膚炎に葛根湯を使うこともあるということが実際の漢方薬の運用です。
こう書いてしまうと「葛根湯がアトピー性皮膚炎に効く!」と勘違いして自己判断で飲んでしまう人もいるかもしれませんが、自分の状態に合わなければ悪化するでしょう。
そして葛根湯が合う場合のアトピー性皮膚炎は稀なので、絶対に自己判断で服用しないでください。
外敵自体のチカラは弱いものの、自身の抵抗力がとてもとても弱っている場合は防己黄耆湯や桂枝加黄耆湯を使うこともあります。
これも世間では「水太りの人のダイエット漢方薬」で有名だと思いますが、別に水太りでなくても虚の状態によって使用することはあります。
標治と本治
急迫症状を引き起こしている場合、根本原因への対処よりもとりあえず応急処置が必要なこともあります。
そうした急迫症状への対処は標治と言います。
しかし、外邪との間で症状が出ていたとしてもゆくゆくは免疫力・抵抗力を上げ、外敵にやられないようにする身体作りも大切で、それを本治と言います。
つまり越婢加朮湯などで改善し、安定したところで肺の虚からの衛気虚である場合は玉屛風散や桂枝加黄耆湯を、脾気虚がある場合は補中益気湯や黄耆建中湯で本治していきます。
標治と本治も言葉で書くと簡単ですが、同時に行った方が良いこともあれば同時だと上手くいかず、本治を優先するあまり標治があまり思わしくいかず、結果的に痒みなどが長引きQOLが下がってしまうこともあります。
この辺りの匙加減も自己判断やAIでは難しい所でしょう。
アトピー性皮膚炎症状の臓腑弁証
アトピー性皮膚炎は病位が皮膚ですが、浅いと表皮レベルですが深いと真皮まで炎症が及びます。
漢方では表皮=皮毛、真皮=肌肉と捉え、これらが蔵する臓腑はそれぞれ皮毛=肺、肌肉=脾です。
であるため、アトピー性皮膚炎の臓腑弁証の際、よく肺・脾で考えることが多いように思います。
もしくはアトピー性皮膚炎の一番嫌な症状は「痒み」であることが多いですが、掻痒感は弱い痛と考えられており、痛みや痒み、そして熱症状の五臓は”心”の熱症状として考えることも多いです。
また、アトピー性皮膚炎が始まる原因としての多くはストレスであることが多くなってきており、アトピー性皮膚炎になってしまうと痒みがストレスとなり、アトピー性皮膚炎とストレスの悪循環で悪化を繰り返す人もいて、この場合はストレス→肝と考える人も少なくないでしょう。
このようなアトピー性皮膚炎と臓腑弁証は一見正しいように見えますが、実際これらを考察して著効する体験はあまりなく、自分の考察が悪いのか、と悩んでしまうほどです。
しかし私は師に恵まれ、アトピー性皮膚炎は病位や熱、ストレスなどで臓腑弁証すべきではなく、臓腑としては体に生じた気分熱や血分熱の解毒を担っている肝・腎が重要との指摘を受け、それが今の臨床に活かされております。
もちろん臓腑弁証が悪いわけではないですが、解毒できない熱邪が本来の大便小便などで解毒しきれない場合に皮膚に出てしまうという考えというわけです。
そもそも熱邪が産まれてしまう原因や先ほどの虚に関して等は臓腑で考えることは大切ですが、何より生じた邪をいかに解毒するかということがまず大切というわけです。
世間一般でのアトピー性皮膚炎に対しての漢方薬のほとんどは黄連解毒湯やそれを含んだ温清飲ベース処方が多いように思いますが、茵陳高湯や竜胆瀉肝湯で肝の解毒力を上げ、腎の解毒力を上げる場合には猪苓湯や五淋散を使う方といった解毒法の方がより臨床的です。
またこれはそれらの毒素が肌にたまたま症状として出てしまっているだけで、それが肌でないところで炎症を産めば別の症状となります。
その人の弱い所に邪は集まりやすいため、症状を生じているところには虚があることが常ですが、解毒という意味においてはアトピー性皮膚炎に限らずそうした考えを持っておくことは重要です。
気・血・津液の盈虚
臓腑弁証や虚実、内外などのことを書きましたが、結局は症状が起こっている局所では気・血・津液の盈虚により異常を生じています。
これはアトピー性皮膚炎に限らず、機能性ディスペプシアでも剥奪性口唇炎でも間質性膀胱炎でも同じです。
またこれもどの疾患でも見られることですが、漢方相談に来られるまでの状況では症状が長期にわたっていることなどが多く見受けられ、ほとんどの場合で瘀血が確認されます。
間質性膀胱炎などの内側の症状では見た目の所見はありませんが、この瘀血に対しても桂枝茯苓丸や腸よう湯、大黄牡丹皮湯、田七人参などで改善していかなければいけません。
書きたいことをいっぱい書きましたが、処方例としてはあまりまとまっていないので、↓に処方例をまとめます。
次回へ
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ありがとうございました
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アトピー性皮膚炎を治すキッカケとなれば幸いです
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心のこもった漢方相談を 平成堂薬局 漢方相談薬剤師 櫻井 大輔




