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アトピー性皮膚炎の漢方処方解説

2026年10月10日

(10分で読めます。専門度★★★★)

アトピー性皮膚炎は今でこそ誰もが知る皮膚疾患ですが、その実ここ数十年で急激に増えた疾患です。

 

ステロイド剤が奏効することが多いのですが、ステロイド剤を中止した時のリバウンドやステロイド剤に抵抗感がある方もおり、漢方相談依頼がスタンダードに多い疾患です。

 

しかし漢方界隈でもアトピー性皮膚炎はかなり難しい疾患であり、その考察などをまとめていこうと思います。

  

目次

  1. アトピー性皮膚炎で使用する漢方方剤
    1. 黄連解毒湯
    2. 温清飲
    3. 柴胡清肝湯
    4. 荊芥連翹湯
    5. 竜胆瀉肝湯
    6. 消風散
    7. 当帰飲子
    8. 荊防敗毒散
    9. 銀翹散
    10. 越婢加朮湯
    11. 治頭瘡一方
    12. 三物黄芩湯
    13. 六味丸
    14. 麦味地黄丸
    15. 知柏地黄丸
    16. 白虎加人参湯
    17. 茵陳高湯
    18. 桂枝茯苓丸
    19. 腸癰湯
    20. 大黄牡丹皮湯
    21. 田七人参
    22. 環元清血飲
    23. 補中益気湯
    24. 玉屏風散
    25. 附子剤+竜骨牡蛎
    26. ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)

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アトピー性皮膚炎で使用する漢方方剤

黄連解毒湯

構成生薬:黄連、黄柏、黄芩、山梔子

言わずと知れたアトピー性皮膚炎で一番使われているであろう漢方薬。

だが、この方剤は炎症を抑える効果があるものの、それは気分熱の実熱の発散に特化しており、冷えがある場合や虚の場合、また一時的に炎症を落ち着かせても続けることで氷伏して症状の悪化を産むこともあり、冷やすことで気・血・津液の滞りを産みやすく、燥性により肌の乾燥も強める可能性もある、病名漢方として扱うにはかなり難しい処方。

 

一番使われている可能性が高い方剤でさえこのような扱いづらさであるアトピー性皮膚炎はやはり他疾患と比べるとかなり独特。アトピー性皮膚炎の人の自己判断での服用は禁物といっていいほど。それは漢方を専門で勉強していない病院処方についても同じことが言える。

 

温清飲

構成生薬:黄連、黄柏、黄芩、山梔子、当帰、芍薬、川芎、地黄

黄連解毒湯と同じくらい使用されていると思われる。構成を見てわかるように黄連解毒湯+四物湯という、解熱剤に補血剤を足した形。黄連解毒湯で炎症を緩和するがそれのみだと陰虚や血滞を助長するため四物湯にて滋陰し血を巡らせる働きで補助している考え。しかし当帰や川芎は温性であるため、実熱の場合はやはり黄連解毒湯単独、あるいは滋陰するとしても六味丸などを考慮した方が良い。

 

柴胡清肝湯

構成生薬:柴胡、当帰、連翹、山梔子、芍薬、桔梗、川芎、牛旁子、地黄、黄連、黄芩、栝楼根、黄柏、甘草、薄荷葉

温清飲ベースの一貫堂処方。主に上半身の胴体の炎症や子供のアトピー症状に使用されることが多い。一貫堂処方の基本は体内の解毒。解毒が上手くできない体質を根本から体質改善する考えからできた処方。

滋陰作用や駆瘀血作用がないため、それらの状態が見られるならその配慮もすることが良い。

荊芥連翹湯

構成生薬:黄芩、黄柏、黄連、桔梗、枳実、荊芥、柴胡、山梔子、地黄、芍薬、川芎、当帰、薄荷、白芷、防風、連翹、甘草

温清飲ベースの一貫堂処方2つめ。部位では首より上部、また青年期の解毒として使用されることが多い。病名漢方ではアトピー性皮膚炎や副鼻腔炎、蓄膿症などに使用される。

柴胡清肝湯と同じく、滋陰作用や駆瘀血作用に乏しいため、それらも考慮する。

 

竜胆瀉肝湯

構成生薬①:竜胆草、黄芩、梔子、車前子、沢瀉、木通、地黄、当帰、柴胡、生甘草

構成生薬②:①+芍薬、川芎、黄連、黄柏、連翹、薄荷葉、防風、山帰来、薏苡仁

 

②は柴胡清肝湯と荊芥連翹湯と同じく一貫堂処方。解毒体質に向けた処方で、その中でも下半身の炎症症状や肝胆経絡の炎症症状、年齢では成人以降で頻用される。①は一貫堂処方ではないが、同様に下半身や肝胆の湿熱症状に使用される。

 

清熱作用が強いため虚熱や冷えがある場合には使用しにくいが、肝からの解毒力を上げることでアトピー性皮膚炎に見られやすい毒素を解毒し、アトピー性皮膚炎にとってかなり重要な処方。

①、②はどちらも使い得るが、①はシンプルに湿熱の解毒作用が強く、②は四物湯が入っていることもあるので、実熱が強い場合は①、それに比べ弱い場合は②で使い分ける。

 

消風散

構成生薬:当帰、生地黄、防風、蝉蛻、知母、苦参、胡麻、荊芥、蒼朮、牛蒡子、石膏、甘草、木通

 

これもアトピー性皮膚炎にはよく使われているが、一般に夏などの気温上昇の影響や湿度で蒸れてしまった場合に使用されることが多い。急性のアトピー性皮膚炎にも使用するし、慢性的なアトピー性皮膚炎にも使用できる。

方剤の名にあるように「風を消す処方」であり、漢方において風は痒みの基であるため、痒みを消す処方という意がある(他の内風では痙攣や震えなどもあるが)。

 

痒みが強いことに加え分泌物も多いことが多く、激しい症状に使用されることが多いが、風邪に対しての薬はさらなる風邪を産み、つまり痒みを悪化させる恐れもあるため慎重に使用すべきである。

 

夏に症状が悪化してきたからと安易に使用すると、実は気温上昇によっての発症でなく、飲食やストレスなどの内因要素が原因であるなどのこともあるので注意。

 

当帰飲子

構成生薬:当帰、芍薬、川芎、蒺藜子、防風、地黄、何首烏、荊芥、黄耆、甘草

 

今までの構成と異なり、清熱薬の要素がなくなり四物湯という補血効果をべースにした処方。

 

つまり血虚による乾燥が主体であり、痒みは地味で見た目も赤味などの症状は強くない。

しかし現実には乾燥肌や老人性皮膚掻痒症などの肌の痒みに使用することは多いが、アトピー性皮膚炎にはあまり使わないことが多い。他方剤の血虚補佐としてたまに使用するかな、という程度。

 

荊防敗毒散

構成生薬:羗活、独活、柴胡、枳穀、茯苓、荊芥、防風、桔梗、川芎、甘草

 

外邪由来の風寒(湿)邪によるアトピー性皮膚炎に使用する。つまり慢性的なアトピー性皮膚炎にはあまり使われず、初期に使用することが多い。

 

銀翹散

構成生薬:金銀花、連翹各、荊芥穂、淡豆豉5、牛蒡子、桔梗、竹葉、甘草、薄荷、鮮芦根

外邪由来の風湿熱邪により悪化したアトピー性皮膚炎に使用する。しかし実際にはシャープな効果を見出すことが少なく、次の越婢加朮湯などの麻黄・石膏や石膏・知母などの方が風湿熱邪の外邪を除去できていることが多いと実感している。

 

越婢加朮湯

構成生薬:麻黄、石膏、生姜、甘草、大棗、朮

 

外邪由来の風湿熱邪により悪化したアトピー性皮膚炎や蕁麻疹などに著効する。湿邪は患部の膨らみやむくみ、また肌汁症状を産むが、それらの湿邪が弱く、熱>湿であれば麻杏甘石湯、そしてさらに熱>>湿であれば白虎加人参湯などを使用する。

越婢加朮湯単体よりも、麻黄石膏の割合の調整のため桔梗石膏や石膏単味を調整することも大事。

 

治頭瘡一方

構成生薬:連翹、蒼朮、川芎、防風、忍冬、荊芥、甘草、紅花、大黄

 

生後間もない赤ちゃん用のアトピー性皮膚炎に対しての漢方薬。

 

赤ちゃんのため、少量を溶かしペースト状にして赤ちゃんの上顎に少しずつ付けるなどで服用してもらうか、もしくはお母さんに十分量を服用してもらい、母乳を介して効果を見込む。

 

大黄が入っているため、お母さんや乳児の便が下痢になることもある。

 

三物黄芩湯

構成生薬:黄芩、地黄、苦参

 

清熱・滋陰効果があり、炎症症状も強いが皮膚だけでなくカラダの内外の潤い全体も枯渇している傾向があるため、陰虚症状である患部症状以外でも手足の火照りが見られやすいなども指標となる。

 

血熱の分野を解毒する働きがあるため、血分の時間帯、つまり夜~深夜での痒みや睡眠障害に対しても使用を検討する。

 

ただし、地黄が含まれまた構成生薬数も少ないため、地黄による胃腸の不快症状を産みやすいので、食後に服用したり、そもそも胃腸が弱い人にはなかなか使用しにくい処方。

 

六味丸

構成生薬:地黄、山薬、山茱萸、牡丹皮、茯苓、沢瀉

 

腎陰虚のベース処方であり、アトピー性皮膚炎に単体で使用することはまずないが、元々陰虚である場合や長年のアトピー性皮膚炎により陰虚を生じた場合にベースの炎症を抑える漢方薬の補佐として使用する処方。

 

単体でこそ使用しないが、腎陰虚は全ての臓腑の陰虚に繋がるため使用範囲は広い。

 

麦味地黄丸

構成生薬:地黄、山薬、山茱萸、牡丹皮、茯苓、沢瀉、麦門冬、五味子

 

六味丸ベースで五味子、麦門冬を加味した方剤。五味子は山茱萸と同じように酸味の収斂作用により腠理を引き締め、虚により緩んでいるアトピー性皮膚炎を是正する。また麦門冬は肺・胃陰虚に使用されるが、肺・胃は皮毛・肌肉の滋陰に繋がるため、

知柏地黄丸

構成生薬:地黄、山薬、山茱萸、牡丹皮、茯苓、沢瀉、知母、黄柏

 

六味丸ベースに知母と黄柏が加味された方剤。つまり陰虚からの虚熱である熱の除去を強めた方意がある。

六味丸と他方剤だけで清熱効果が弱い場合に使用する。

 

白虎加人参湯

構成生薬:知母、石膏、人参、炙甘草、粳米

 

ホットフラッシュや暑がりで汗かきな場合によく使用されている方剤。

麻黄・石膏で外邪の湿熱をさばけない場合にこの白虎湯ベース処方を使用する。

 

エキス剤では人参が入ったものしかないが、熱>>湿という状況で湿邪があまりない状況で使用するため、人参は生津として働き、患部の陰虚・津虚を是正する。

 

しかし補気作用が邪を強めてしまう恐れもあるため、その点は気を付けて観察して使用する。

 

茵陳高湯

構成生薬:茵蔯蒿、山梔子、大黄

 

肝臓の解毒力を上げ、アトピー性皮膚炎の原因である毒素を排出する方剤。

大黄が含まれているため、便秘の人には特に良いが、下痢の場合には過度に腹痛下痢を産み、虚を強めないかだけは気をつける。

 

また、熱>>湿の場合は竜胆瀉肝湯で解毒を高める。

 

桂枝茯苓丸

構成生薬:桂枝、桃仁、芍薬、茯苓、牡丹皮

 

皮膚所見で瘀血が見られる場合、いくら状況に合った漢方薬を出していても血が患部まで運べず、効果が思うように発揮できない。

 

特に痒みが強いため搔き壊しを繰り返している場合や掻き壊しがひどくない場合でも長期の炎症を生じている場合はほぼ必ずと言っていいほど瘀血を生じている。

 

それに対してお出しするベーシックな駆瘀血薬。

 

腸癰湯

構成生薬:薏苡仁、冬瓜子、牡丹皮、桃仁

 

先の桂枝茯苓丸よりも血熱の側面が強めにみられる場合に使用する。

 

個人的にはアトピー性皮膚炎だけでなく、間質性膀胱炎などにも使用することも多く、隠れた名方剤であると思っている。

 

大黄牡丹皮湯

構成生薬:大黄、牡丹皮、桃仁、冬瓜子、芒硝

 

腸癰湯の構成にかなり近く、大黄・芒硝が含まれるため、便が通常~軟便の人には腸癰湯、便秘の人には大黄牡丹皮湯という使い分けで考えている。

 

茵陳高湯などの他の大黄剤との重複も考慮する。

 

田七人参

構成生薬:田七人参

 

瘀血が見られ、また同時に出血傾向である場合には田七人参を使用する。

 

掻き傷があるだけの出血ではなく、出血したらダラダラと止まりにくい場合の止血効果を求めた使用。

 

環元清血飲

構成生薬:丹参、川芎、紅花、芍薬、香附子、木香

 

駆瘀血剤ではなく、動脈側の働きを活性化する活血剤として使い分ける。

 

また、基本的には温剤の方が多いため、熱比重が高いアトピー性皮膚炎への使用は難しい。

 

補中益気湯

構成生薬:黄耆、人参、白朮、炙甘草、当帰、橘皮、升麻、柴胡

 

疲労時に使用されることが多い方剤だが、脾・肺の虚からのアトピー性皮膚炎にも著効する。

 

食が細い、食後の眠気が強い、低血圧、食べても太れない、疲労感が強いなどの所見と、皮膚症状は赤味や痒みを伴うことはもちろんあるが、赤味の強さは弱く痒みの訴えも強すぎないことが多い。

 

補中益気湯自体、少しの熱透過性もあり、また十全大補湯や人参養栄湯や帰脾湯のような気血を補う方剤や六君子湯のような補気しつつ化痰する方剤に無いアトピー性皮膚炎に向いた薬効がある。

 

玉屏風散

構成生薬:防風、白朮、黄耆

 

補中益気湯のように脾虚症状は見られず、暑いわけでなくても汗をジトッとかきやすく肌の締まりが感じられない、風邪をひきやすいなどの肺気虚の場合に使用する。

 

肌の抵抗力が弱いことで寒暖差やハウスダスト、排気ガスなど外的要因に過敏反応を起こしてしまっている状態。

  

これを外敵が入ってこられないように防御する”衛気”というものを本来人はまとっているが、それ弱い場合に玉屏風散で強化してあげる。

 

附子剤+竜骨牡蛎

構成生薬:附子と竜骨、牡蛎

 

アトピー性皮膚炎の状態としては痒み、赤味、熱感、出血、肌汁、膨らみなどのかなりの炎症を産んでいるにも関わらず、身体自体は冷えの所見が散見されることがある。

 

もちろんアトピー性皮膚炎だからといって全てが熱症状の訴えばかりではないが、これは飲食物や涼性の漢方薬、また冷房の使いすぎなどで体内は実は冷え込んでおり、冷えると筋肉や血管が収縮してしまうように、身体の中の血管が縮こまってしまう。

 

そうすると本来ある程度体内にあるはずの血が皮膚表面などの表側に多く存在することとなり、血は体温を伴うため、本来の状態より皮膚に多くの血が存在することで皮膚だけで見ると熱症状を産んでしまっている状態。

 

この時に、病院などではアトピー性皮膚炎ということで黄連解毒湯などを出すことが多いが、身体の中をより冷やしてしまい、逆に皮膚は内側の冷えが強まったことで寄り外に血と熱が出てきてアトピー性皮膚炎の悪化となってしまうことは案外によく見かける。

 

患部を見ると熱を伴った後に対し附子などの温めるお薬を使うことはかなり抵抗を覚えることもあるが、そうしないと良くならないケース。

 

また、附子で温めるだけでなく、竜骨牡蛎でしっかりと暖かさを皮膚から体内、体内から皮膚へ循環させる手助けも重要。

 

ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)

もののついでですが、漢方薬では全くないものですがアトピー性皮膚炎に一番良く使われているステロイドについての私の捉え方も書いておきます。

 

ステロイドは内服にしても外用にしてもアトピー性皮膚炎に限らず炎症を抑えるすごいお薬ですね。

 

これに助けられた方はとてもたくさんいるでしょう。

 

そうしたステロイド剤を漢方的に分析するとどうでしょうか。

 

炎症を抑える効果は素晴らしいですが、その功罪として何より大きいのが「感染症への抵抗力が落ちること」です。

 

炎症が起こっている時、そこには外敵と免疫力の戦いがあります。

 

そこでステロイドを使用すると感染症に負けてしまう可能性が上がる、ということは外敵と戦っている自分たちの力を落としているということになります。

 

つまり、免疫力を落とし、戦いを鎮火させているわけです。

 

治しているというより敵に対して抵抗せず、白旗を上げてしまうわけです。

 

なのでステロイドを使っている間は戦いが起こらず炎症がひどくなることもありませんが、止めると自分を守ろうとする力が再燃し、炎症がぶり返し、いわゆるリバウンド症状を起こします。

 

また、リバウンドが起きないようにずっと使い続けると、副作用として色素沈着や皮膚の萎縮、毛細血管の拡張による赤味などを産みます。

 

使い具合によっては素晴らしいのですが、免疫力を下げてしまうというのはなかなかに恐ろしい。

 

西洋医学は抗生物質の存在が素晴らしいため、それらで対処できることもありますが。

 

でもやっぱり、一時的な症状ならまだしも、アトピー性皮膚炎のように長期にわたって続く炎症や、人生に渡って続く可能性のある炎症は、自分の身体を調整することで緩和するにこしたことは無い、と思います。

 

ブログをお読みいただき

ありがとうございました

このブログがあなたやあなたのお子様の
アトピー性皮膚炎を治すキッカケとなれば幸いです

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心のこもった漢方相談を 平成堂薬局 漢方相談薬剤師 櫻井 大輔